目に見えぬ歪み四 話
肘が崩れてシーツに倒れ込みかかった上体を、カカシが腕を回して支える。 次の瞬間、身体を反転させられたイルカは、圧し掛かってくるカカシの細められた目に遭い息を詰めた。 「……もう、終わりだと思った? まだだよ、これくらいじゃ全然足りない」 「ひ……ッ!」 無造作に抱え上げられた脚がカカシの肩に掛けられ、僅かに浮いた腰を掬い上げられる。ああ、血が出ちゃってるね、と平坦な口調で言われてカカシの視線の先を知り、イルカは顔をこれ以上ないほど真っ赤に染めた。 震える声で見ないで欲しいと頼んでも、カカシは笑うだけで聞いてくれない。 指の腹でぐっ、とそこを押す。そのまま少しだけ力を込めれば、指先が内部に飲み込まれていく。傷付いた箇所が開かれる、ピリリとした痛み。 堪えられないほどではない、じりじりとするような苦痛に、イルカは声もなく呻いた。仰け反った喉がひくつく。 優しくして欲しいと思っていたわけではない。そんな期待、あんな誘われ方をした以上、最初からしていなかった。覚えていたかったから、むしろ酷くされたかった。 だけど、こんな。 ぺちゃり、と不意に濡れた音が耳に届き、イルカはきつく瞑っていた目をうっすらと開けた。涙で霞む視界には、歪んだ天井が映るのみ。 何の音だろう、とぼんやりと思った途端、ぬるりとした感触と共にその音源を知り、イルカはギョッとして目を見開いた。 「なっ……やめて、止めて下さいッ、はたけ上忍!」 慌てて身を捩り、足をばたつかせて己の股間に埋められているカカシの頭を引き剥がそうと、その髪を掴んで引っ張った。 指で開かせた後口を執拗に舐めるカカシの舌の感触。ぶるりと身を震わせたイルカは、大きくかぶりを振ってじわりと滲み出すようなその感覚をどうにか逃がそうとする。 傷付いた部分を癒そうとするかのように、カカシはそこを舐め続けている。まるで、愛のある行為であるかのように――――。 「お、願……っ、んな、ことっ……しな…でぇ……ッ」 大きく交差させた両腕で顔を隠し、イルカは子供のように泣きじゃくり始めた。 気の済むまで嬲って、こちらのことなどお構いなしに欲望をぶつけてくれて構わない。先の痛みには身が竦むけれど、こんなふうに気持ちもないのに優しい素振りをされるよりもずっとマシだと思った。 カカシは応えない。唾液でぬるぬるになったそこに、今度は舌を差し入れていく。指とは違う、柔らかく弾力のあるそれが入り込んできて、イルカはヒッと息を飲んだ。 襞を掻き分け、唾液を内壁に塗りつけるように、何度も差し込まれては引き抜かれる。その気味の悪いような感覚が、誤魔化しきれぬ快感に取って代わると、先程与えられた痛みに萎えていたイルカ自身がゆるりと勃ち上がり始める。 「あ、……だ、ダメ……ッ」 羞恥に震え、反応を示す箇所を隠そうとして下肢に伸ばされた手を、カカシはあっさりと払い除けた。 「さっきはイタイ思いさせたから、今度はヨくしてあげようってのに、何が不満なわけ?」 ようやくそこから顔を離し、濡れた唇を舐めながら目を細めてイルカを見下ろしたカカシは、柔らかく解れたそこへ指を二本揃えて宛がった。 くぷ、と音を立てながらゆっくりと潜り込ませていくと、イルカが鳴いた。気持ちイイ? と訊ねてやれば、声を殺そうとして唇を噛んでしまう。 奥まで埋め込み、内で指をバラバラに動かし時折何かを探すように壁を擦り立てる。 異物感に耐えながら、イルカが耳に届いた「あれ、ここかな…」と言うカカシの呟きにぼんやりと首を傾げた時。 ビクン、と勝手に身体が跳ね上がった。 「……な……」 「見ーつけた」 自分の身に何が起こったのか理解できず驚きと怯えの混じった目で見上げてくるイルカに、カカシはニッ、と唇の端を上げて見せた。 「ね、判る? ココが、アンタのイイトコ」 言い様、先程イルカが反応したところをぐりっ、と強く押す。知らず高い声が上がり、イルカは一層怯えを強くする。 しつこいくらいに同じ場所を擦り立てられて、イルカはそのたびに身を跳ね上げては甘い声で鳴いた。それは、快感であると認めることさえできないほどの深い愉悦。 一度も触れられることのないまま、イルカの前は今にも弾けそうにピクピクと震えている。 「このままイカせてあげる」 優しげな声音で囁いたカカシは、三本に増やした指で、一層強くそこを刺激し始めた。時々ぐるりと指を回転させ、深く抉るようにすると、イルカは悲鳴を上げて身を捩った。 「っああッ、あッ、あッあッ、ひぁあ……ッ!」 ビクビクと全身を痙攣させ、イルカが達する。吐き出された白濁がカカシの胸元を汚した。 「じゃ、今度は俺の番ね」 ぐったりとしているイルカの両足を更に大きく広げさせ、無造作に指を引き抜き既に猛っていたものを宛がう。そのまま一気に奥まで貫き通せば、イルカの背が撓り仰け反った喉からは掠れた悲鳴が漏れた。 乱暴に突き上げられ揺さぶられ、もう何が何だか判らない。 カカシはその後、何度達してもイルカを解放しようとはしなかった。イルカからはもはや掠れた呻き声さえ聞けなくなり、意識も半ば失っている状態だった。それでも、カカシは体位を変え幾度もイルカを貫いた。 カカシに持ち上げられた、血塗れの下肢をぼうっと眺めながら、イルカはふと、彼は今本当にイイのだろうか、と考えた。 痛みも快感も既に麻痺した身体を、飽きることなく貪っている彼。 任務明けで、溜まっているから。 偶々、そこにいたのが自分だったから。 そんな理由でも、彼が自分を抱いて満足してくれたなら、それでいい。愛されてなんていなくても、一夜限りでも。 カカシ先生、好きです。 この先も決して告げることはないだろう想いを、そっと心の中で呟く。慣れてなんかいないことは、きっともうバレてしまっているだろうけれど。 だけどそんな言葉を口にして、興醒めだと思われるのは嫌だ。 ああでも、きっと朝になってアナタの顔を見るのは辛いから。どうか俺が気付いて部屋を出るまでは眠っていて。 「………ルカ、せんせ………」 完全に意識を手離すその瞬間、己を強く掻き抱いた腕の力と、切なげに名を呼ぶ柔らかな声を。 イルカが知ることは、なかった。
イルカに任務が与えられた。 Aランク任務に就く上忍のサポートをしろというのがその内容。 サポート役には、大抵その上忍が相性のいい――つまり作業を行うのにやり易い中忍を指名するのが常である。 イルカを指名した上忍の名は、蒼葉サツキと言った。
引き続き裏になっちゃいました…(苦) こ・こんなはずでは。何でだろう、誰の所為?(お前や) オリキャラ・蒼葉(あおば)サツキ上忍。 名前しか出てきませんでした。次回もそんなです多分。 その次辺りでどーゆー人か判るのでは。 因みに男性です。本当は、皐月アオバと言う名だったんですが。 …いるんですよね既に、アオバさんて(忘れてた/死)。 で、氏名をひっくり返したわけです。だって蒼葉上忍、て響きが良かったんですぅ。 '03.09.01up
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