INSANE FEAST

  −4−

 

 一体、どれほどの時間が過ぎたのだろう。
 男たちは飽きもせず、イルカを貪っている。交互に甚振ったり、同時に嬲ったり。
 どろどろの身体は冷めることなく昂ぶる。始めに喉に流し込まれ、後口にまで塗り込められた媚薬がまだ効いているのだろう。
 イルカは、とうに意識を身体から切り離していた。
 喘ぎ身悶える身体の奥で、冷静に男たちの様子を眺める。
 今イルカは、片腕だけを解放され、仰向けに寝そべった男の上に乗せられている。背後からも別の男が覆い被さっており、イルカのちいさな蕾に二人の男の性器が無理矢理突き込まれているのだ。限界を超えて広げられたそこはひどく出血していたが、媚薬の効果か痛みは分厚い膜越しに遠く感じるのみだった。
 痺れて言葉を発することのできない舌、更に顎の関節を外されたのは、男のものを口で奉仕するためだ。今も、残ったひとりのものを頬張らされている。
 何が楽しいのだろう、冷めた思考が疑問を抱く。男の身体を撫でまわして舐めまわして、吐き出せれば何でも構わないのだろうか。
 イルカは、先の男に犯されたことは、特に大したこととは思っていなかった。
 彼はカカシのことが好きで、自分を憎んでいて。それでも彼の能力は明らかに自分よりも上だったから。
 力のない者が力のある者の自由にされるのは、仕方のないことだ。耐えられなければ、強くなればいい。屈辱を感じないわけではないが、ただのリンチと変わらない、そう片づけることができる。
 だが、これは違う。
 自分よりも力の劣る者――おそらく平常時であれば三人同時にかかってきてもイルカの敵ではないだろう――に慰み者にされるなど、正気であったなら耐えられるはずのないことだ。ここまでの状況に追い込まれる前に、仕込みの毒を噛み砕くなり、舌を噛むなりしていただろう。

 ―――ならば、今の自分は正気ではないのだろうか。

 死を選ばなかった自分に、イルカは内心で嘲笑った。だがそうではない。イルカには死ねない理由があるのだ。

 カカシが。
 もしもカカシが里にいない間に、自分が死んだら。
 それもこんな理由で、しかも自害などしたら。
 父を自殺に追い込んだ里を。今ではとても大切に思い、何よりも愛している木ノ葉を。もしも、憎むようなことになってしまったら。――そんなのは、悲しすぎるではないか。

 身体の奥に、飛沫が迸る。ほぼ同時に、喉の奥にも同じものが注ぎ込まれた。
 無造作に引き抜かれ、ピリ、と走る痛みさえ遠い。弛緩した後口からは、血と大量の精液が混じったものがどろりと溢れた。
 男たちが、その様を見て下卑た笑いを零す。

「すっげ、ドロドロ」
「二日もこんなことしてたら、アンタの穴、ゆるゆるになっちまうかもなあ」
「こんなんでこの先、一人のオトコ相手に満足できるかね」
「もしオトコに捨てられたら、俺らでまた可愛がってあげますからね、センセ」

 げらげらと笑う男たちは、どうやらイルカの相手が誰かまでは知らされていないらしい。まあ、自分たちが敵にまわそうとしているのが写輪眼のカカシ"だと知っていれば、こんな命知らずな真似、いくら上官命令でも聞いたりしなかっただろう。
 せめて、その上官殿の言いつけどおり、カカシが戻る日の前には消えてくれれば良いのだが。
 と、男たちがごそごそと身仕舞いを始めた。食事か、仮眠でも取りに行くのだろう。気が済んで帰るというのは期待するだけ無駄なことだ。
 イルカの身体は再びしっかりとベッドに括り付けられ、腕に注射を受ける。あの男がかけた術を固定させる薬。これを打たれるのも、もう何度目か。効き目があまり持続しないものらしい。そろそろ免疫がつきそうだ、と虚ろな視界が徐々に真っ暗になるのを感じつつ思う。
 隣室へと消えていく気配。
 イルカは、わずかに身じろいだ。
 二日やそこら飲まず食わずでいたところで死ぬことはないが、度を越えた性交が体力を根こそぎ奪っているのは間違いない。縛られ薬など打たれなくとも、今のイルカに三人の男をどうにかできるとは思えなかった。

 ―――でも、まだ大丈夫。先が見えないわけじゃない、必ず終わりが来るのだから。

 

 

 カカシが、帰ってきたら。
 自分はどうするだろう。あの男の思惑通り、別れを告げるだろうか。それとも何もなかったふりをして、彼の元にい続けるだろうか。
 だが、カカシが気づかないはずはない。男たちがきちんと痕跡を消していけば相手までは判らないかもしれないが、イルカが彼を裏切ったことは確実に知れてしまう。
 どちらにせよ、今までどおりではいられない。いずれは別れが待っているのだろう。
 悲しいな、と他人事のように思う。己の感情までが、もはや遠い。
 いっそこのまま、何も判らなくなってしまえばいいのに。そう思って、目を閉じた。
 目を開けていても閉じていても、闇は変わらずイルカを支配していた。

 

 

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五話目だけど(以下略)。
書きたくないシーンが終った〜〜〜!!(ってオイ)
いえ、もうちょっと続きますが。はい。
当時の自分、どんだけイルカ先生を甚振りたかったんだ…(遠い目)
さて、どうでしょうか。
今回はあえて短く。多分、次回も短めに纏めると思いますが。
あと二話か三話で終わりたい気持ち。
さらっと終りたいね!(この話をどうやって…?)
つか、前回UPから10ヶ月以上も経ってるよ!!(怖)
……ホント、スミマセン…(土下座)
'07.10.22up


 

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