八百鼡の苦悩
後編
「ハラへったー」
一方こちらは三蔵一行。いつものフレーズを叫びながら、いつも通りの喧嘩をして、いつも通り西へ向かっていた。
「悟空。空腹のところ申し訳ないんですけれど、とってもイヤ〜なところに来てしまったみたいです。運動の準備、お願いしますよ」
と、八戒。続けて悟浄。
「あラま、ホント」
「ワンパターンもあきてきたぞ」
毒づいたのは、言わずもがな。
「紅孩児の奴ヒっマだなぁ! オレ、この先のでっけぇ木から出てくると思うな」
「いーいカンしてっな。猿のクセに。で、オレも、同感。でもって、第一声が」
「待ち兼ねたぞ、三蔵一行! ですかね。やっぱり」
「・・・八戒、今のモノマネ?」
悟浄のサムいツッコミは無視して、三蔵がいつも通りの低い声で、
「どっちにしろヤツのご指名は猿だ。任せる」
俺は知らんと言わんばかりだ。
「よーし、悟空。お前、負けたら次の町で、一食ヌキな」
「好色ガッパにしちゃあ良い意見だ。悟空。決定な」
「えー三蔵! それかなりオーボー! 勝ったら肉マン追加のほうがいい!」
「来ましたよ、追加の肉マン」
いつの間にか先程予想された大木の前まできた四人は、その木の上に紅孩児を確認した。
その一寸前。紅孩児一味。
「頼みがある」
紅孩児様が厳しいお顔で切り出したのは、孫悟空との対決をお望みという内容のものでした。もちろん、お止めしました。でも。
「独角、俺は弱いか?」
「いや、だが、」
さっきまで私と一緒にお止めしていた独角ですが、
「あーあ、言い出しちまったお前を止めれたことなんか無かったな。その代わり、」
「ああ、無茶はやらん。李厘、いいな。お前もだ」
「チェー!」
という訳で、紅孩児様お一人、木に登って行かれたのです。もちろん私たちも、近くに身を潜めていました。
そしていよいよ三蔵一行が近付いて来ました。
「待ち兼ねたぞ。三蔵一行!」
ああ、おいたわしや紅孩児様。手の内はすべて読まれているようです。
「ビンゴ! って、当たってもあんまり嬉しくないですねぇ」
「進歩のねえヤツ・・・」
「なんか、戦う前から、気ィ抜けるぅ」
狙いの孫悟空がガックリ肩を落としてました。紅孩児様ここでメゲないでいつものように台詞キメちゃってください!『今日こそ決着をつけてやる』って! ところが、
「きょうも」
? 今日・も?
多分、紅孩児様ご本人以外その場にいた全員、その間違いに気が付いていたと思います。
「今日も一段と綺麗だな! 三蔵!」
目が点になっていなかったのは、紅孩児様と三蔵だけでした。そして、次の瞬間、無数の弾丸が紅孩児様に襲いかかりました。
ブチ切れた三蔵が鳥肌立てながら銃を乱射してきたんです。
「やばい! 八百鼡、援護してくれ!」
「はい!」
めくらましの煙玉。いつもより多めに持ってきておいて良かった。
とにかく、その日は一目散に逃げ出しました。後で公主様に何と言われようと構いません。それに、怒りに任せて発砲したはずなのに、三蔵の撃った弾は、紅孩児様の右肩を貫通。敵ながら天晴と言うか、何て言うか。手当てが先でした。
そ、そんな事より、この時、紅孩児様は自白剤を召されていたわけで、本心と言うか思ったことを片っ端から喋り捲るというか、ということは、つまり、あれは紅孩児様が思ったことであり、『も』って言っていたっていうことは常々思っていたって言う事で、つまり、紅孩児様は、三蔵のこと・・・。
ウソ〜
とてもショックでした。夢なら覚めてほしかったのですが、次の日、掃除のために入った紅孩児様のお部屋で、昨日の日付のある日記を見てしまったんです。あ、日記見たこと言っちゃダメですよ!
○月×日 晴れ。
今日、三蔵に常々思っていたことを告白した。
照れ隠しに銃をブッ放された。
可愛い奴。
私、再起不能になりたいです。まさか紅孩児様が、ホ・・・。ああ! 自白剤なんて物を簡単に作れる自分が憎い!
いっそやけになって、今作っている公主様からの追加注文10kgをドブに捨ててしまおうかしら?
ああ、私はこれからどうすれば・・・。
紅ちゃん大好きです(笑)
本当は、八百鼡ちゃんと幸せになってほしいんですけどね。
うちの紅ちゃんは、三蔵のストーカーなんで…(爆)
皆さん、こんな紅→三って、いかがですか?(笑)
同士求む〜!(死)
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