凍りついたようにただ突っ立ったまま動こうとしない金蝉を、捲簾は呆れたように見遣り、自らはさっさとベッドへと上がった。 「ちょっと、何してんだよ。ヤリ方、覚えてんだろ? また縛られたいわけ?」 冷たい声。泣きたくなるのを堪え、金蝉はのろのろとベッドへ近づいた。手を伸ばしかけ、前回のことを思い出してその手はシーツに付き、身体を支えるようにする。 最初からそのつもりであった捲簾は今日は、ベルトを着けておらず、釦もはめていなかった。歯で挟んでジッパーを下ろそうとして、唇に当たるその感触に一瞬躊躇する。が、思い切って一気に引き下ろした。 下着をずらして、まだ何の変化も遂げていないものに恐る恐る舌を這わせる。 少しずつそれが首を擡げてくると、ゆっくりと口内へと招き入れる。 早く解放されたくて必死に愛撫を施すが、それはある程度の硬度を持つとそのまま、一向に絶頂を極める様子もない。息を乱すこともなく見下ろしてくる捲簾が、わざとらしく溜め息を吐いた。 「……ホンット下手な。あんた」 やっぱクチだけじゃなぁ。そう、金蝉には理解できないことを呟き、ぐいと髪を引いて金蝉の頭を己の股間から引き剥がす。 ホッと息を吐く間もなくそのまま引き寄せられ、金蝉は捲簾の隣にうつ伏せに倒れ込んだ。 身を反転させた捲簾が、圧し掛かってくる。 「な………に、」 「処女はあんまり好きじゃないんだけど」 ヨくないし、そんなことを言いながら金蝉の下肢を守る衣に手をかける。脱がせづらいそれを、引き千切る勢いで剥ぎ取る。 思いがけぬ事態に驚き、逃れようと暴れるのを容易く押さえ込んだ捲簾は、耳元に唇を寄せて笑い混じりに囁いた。 「………でもしょうがないよなァ。あんた下手すぎるんだもんよ。上のクチがダメなら下のクチ、ってね」 ぐい、と肉の薄い双丘をつかみ割り開いて。 無造作にその狭間に押し付けられた熱。その正体を悟った金蝉の顔が蒼白になる。 今まで知り得なかった、カラダを繋げるという行為。 それがどういうことをするのか、初めて判った。 ―――――よりによって、この捲簾に。 「…………い、いや………」 怯えきった、震える声での抗いを、もちろん捲簾が聞いてくれるわけもなく。 「男ヤんのは初めてだからなー。多少イタくっても、カンベンな?」 多少どころでは済まないだろうことを知りながら、軽くそう言い捨てて。 捲簾は笑いながら、一気に金蝉の身体を引き裂いた。 目の前が真っ赤に染まる―――――― 「――――いやあああッ!」 人形のように押さえつけられた記憶が、フラッシュバックする。逃れることも適わず、好きなように身体中を弄られた、幼い頃の記憶。 『今度もし、また怖いことや辛いことがあった時には――――』 優しい声での大切な約束の言葉に、必死に縋りつく。 こわい。こわい。こわい。いたい。いやだ、やめて、たすけて。 たすけて。
「天蓬ッ……!!」
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