LOVELY BABY
〜7〜



「ひっ……!」

 鋭く息を呑む音。
 俺は構わず、アナルに舌を這わせた。唾液でぬるぬるに濡らし、舌先でつつくように刺激すると、そこがひくりと小さく呼吸した。まだ、二度目なのに、そこで感じる快さを覚えているのだ。
「エロいなァ、お前……」
 ちゅうっと吸い付いてやれば、ガキの身体がびくびくと細かく痙攣した。
「やだぁ、やだ、いや……」
 小さく繰り返す、その声は完全に涙混じりだ。ホント、サド心をくすぐるのが巧い奴だ。ゾクゾクする。
 綻んできた孔に指を添える。つぷっと先を埋め込んだら、尻が震えた。痛い、のではないだろう。俺はそのまま、ゆっくりと根元まで飲み込ませていった。
「あ、あ、あ、」
 何度か抜き差しするたび、両手で塞いだ唇から、それでも微かに声が漏れる。感じてる声音だったから、続けた。指を増やして、内部を押し広げて。きゅうきゅうと締め付けてくるそこに、早く挿れたくて。
「サンジさん……っ」
 縋るように呼ばれたら、もう駄目だった。いつもなら着けていない、面倒なベルトをもどかしく外し、前を寛げる。入れたままの二本の指を開いて入り口を広げさせ、色づいた柔らかな蕾に充分に育ったペニスを押し付ける。
「……いくぜ、ゾロ」
「――あ……」
 ガキの背が、緊張に強張る。それとも、期待、だろうか。掠れた声が物欲しげだと思うのは、俺の気のせい? でも美味そうな色をしたそこは、俺を取り込もうと蠢いているから。
 俺は奴の短い髪を掴んで無理矢理首を捻り、俺のほうを向かせた。手が外れ、涙でぐしゃぐしゃの真っ赤な顔が露わになる。想像以上に可愛くて、キた。そのまま腰を進めながら、上がりかけた悲鳴を飲み込むように、唇を重ねた。
 喉の奥、くぐもった悲鳴。見開かれた目。ポロポロと零れ落ちる、キレイな雫。だれにも見せたくない、そう思うと同時、だれかに見せ付けてやりたいと矛盾したことを思った。このガキが、俺を好きで。俺にすべてを差し出している、この姿を。
「ハ……、イカレてるぜ」
 こんなガキ相手に、独占欲? 思わず、自嘲が漏れる。
 俺は、この店のナンバーワンで。お客サマのニーズに合わせて、態度や仕種を変えて見せるけれど、俺の中でのお客サマの順位といえば、訪れる頻度や、チップや貢物の値段だ。こんな金のねェガキなんか。まだ常連にもなってねェ客なんかに。そもそも、ここへ誰かを連れ込んだことなんて、いちどだって。
「……ぅあ、あ……!」
 くちづけを解いてしまうと、ガキはもう、抑えることも忘れて喘ぎだした。時々それに、俺の名らしき音が混じる。タオルを握り締め、多分無意識に俺に合わせて腰を揺らしながら、必死に呼ぶ。
「俺が好き?」
「っあ、あ、んッ――」
「ゾロ、答えな。俺が、好き?」
 繰り返して問えば、嬌声を迸らせながらもガキはこくこくと頷いた。
 そうだ。店の中でだけのごっこ遊びじゃない。こいつは本当に俺のことが好きなのだ。それだけで、何も知らずにこんな店に入ってきて、そして、金を払ってまで俺と話したいなんて――。

『健気じゃねェのよ』

 あの日、電話越しのシャンクスの言葉。
 あァ、本当にそうだな。健気で可愛くて――馬鹿だ。退屈だから、気が向いたから、結構好みだったから。そんな理由で玩ばれて、それでも俺を好きだ、なんて。本当、馬鹿だ。
 壊れた玩具みたいに首を縦に振り続けていたガキが、叫んだ。
「サンジさんが、好きっ、だ……!」
 何されたっていい、恋人になれなくてもいい、金なら、バイト頑張るから、だから。
 胸を、突かれた。
「……いいこだ、ゾロ」
 上体を傾けて汗に濡れた首筋にキスをする。ぺろりと舐め上げて、耳の後ろへ吸い付く。痕を残したいなんて、そんな馬鹿げたことを思ったのは初めてだった。
 半ばまで突き刺さっていた楔を引き抜き、タオルの上に尻を落として座る。そしてガキの腰を引き寄せ導いた。
「こっちおいで、そのまま、そう――いいこだね」
「あ、うんっ……」
 ガキは引かれるまま、恐々と俺のものを自分から飲み込んでいく。あ、あ、と小さく上がる声を、しゃぶられているような粘膜の感触を、うっとりと目を閉じて味わう。
「んっ……ほら、全部入った。気持ちいーとこ、当たってる?」
 深々と刺し貫かれる感覚に声も出せないらしいガキは、ガクガクと頭を縦に揺らした。
 膝裏に肘を引っ掛け、おおきく脚を開かせて、ゆっくりと突き上げる。ぎゅうっと絞り上げるような内部の動きに、俺まで呻いてしまう。声を止められない、なんて、そんなのもきっと初めてで。初心いガキに、ここまで振り回されている自分が、いっそ可笑しかった。


 そうして、終わりが見えようとする頃。
 ドアが無遠慮にノックされた。
「…………!!」
 ガキが、ビクンと全身を竦ませる。

「サンジ? いるのか? 李梨ちゃんが声がするっつってたんだがなァ……」

 シャンクスだ。
 李梨ちゃんてのは、シャンクスに惚れて押しかけで事務とか雑用とか進んでやってくれてる、元オカマバーの人気ホステスだ。ちなみに手術済みだから、外見はほとんど女の子、それもレベルはかなり高い。俺の趣味じゃねェが。おそらく、ベッドメイクか何かのついで、この部屋の前を通りかかって、シャンクスに報告したんだろう。
 ガキはかわいそうなくらい怯え、俺の腕に爪を立ててきた。無理もない、ドアはガキの正面、ほんの一メートルほどのところなのだ。
「何されてもいいんだろ?」
 俺はガキの耳元にそう囁き、萎えかけたペニスに指を絡め、扱いてやった。空いた手で、叫びかけた口を覆う。
「あァ、いいぜ。入れよ、シャンクス」
「何だやっぱいんのか。お前、今日は休みだったんじゃ――」
 俺が応えると、ドアが開いて、入ってきたシャンクスが目を瞠ってその場に固まった。
 ドアノブが捻られる音に合わせて一際力強く突き上げ、ペニスを追い上げてやれば、ガキはそのシャンクスの目の前で、堪えることもできずに白濁を噴き出した。俺も、ガキとほぼ同時に射精していた。
 手のひらに熱く震える息。降りかかるあたたかな雫。やがてその身体は小さく縮こまり、しゃくり上げて泣き出した。
 しばらく呆然と突っ立っていたシャンクスが、我に返って溜め息をついた。呆れ果てたというような目で俺を見て、呟く。
「……お前ね。客に何やってんの」
「いんだよ。こいつがして欲しいって言ったんだから」
 な、と同意を求めつつ、唇を塞いでいた手を退け、代わりに止まらない涙で濡れた頬を優しく撫でてやる。
 ガキは答えない。多分あまりの羞恥に、頭が混乱して俺の言葉の意味も判ってないのだろう。ただ小刻みに震えて、後から後から涙を溢れさせている。
 俺はガキの肩越しに、シャンクスを睨んだ。口元にだけ、笑みを乗せて。

「あんま見んなよ。俺のにゃんこちゃん」

 

 

 

 

      ――――NEXT

 



変なとこですが、またまた切りま〜す。
そういや、ずいぶん前、確か何かの本で(間違いなくBL系だが…)、
タチ専門のひとを『バリタチ』って言うのだと知りましたが、
響きが嫌だったのと専門用語をあまり使いたくなかったので『タチ専』。
タチやネコは普通に通じるからともかく、あまりマニアックにはしたくないのです。
面倒くさがりなせいももちろんありますが、
読んでる人に無理なく伝わるように、でもあるんですよ。
ちなみにひとつ目のノルマは、サンジさんの最後のセリフでした(笑)
事務兼雑用の、李梨(りり)ちゃん(源氏名)。名前がお気に入りです(笑)
'09.01.19up


 

 

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