LOVELY BABY
〜4〜



 ぐったりと身を投げ出し、短く息を継ぎながら解放の余韻に浸るガキを見下ろした俺は、舌を出して乾いた唇を舐めた。
 ここまでなら、まァ、通常のサービスの域だ。あとは手コキでもフェラでも、ローションで全身マッサージなんてコースも客の希望によってはあるけど。
 俺は真っ赤になってる形のいい耳を唇で挟み、ちゅっと吸い上げてから囁きかけた。

「どうする? ……このままフルコース、イっちゃう?」

 本来、商品からこういう誘いはかけない。あくまでお客サマのご希望があっての話だ。けど、ここのルールを知らないガキなら上手く丸め込めるだろうと、そんなふうに思ってしまったのだ。
 さすがにイきはしなかったものの、俺のモノもかなりキてる。正直、挿入れたい。
 ガキはぼんやりした目で俺を見、微かに首を傾げた。フルコース、の意味が判らないらしい。
 俺は優しげに笑って、奴の脚を無造作に押し開かせた。手を伸ばして手繰り寄せた枕を腰の下に差し込めば、下肢の奥まですべてが俺の前に曝される。
 己の取らされた体勢に気づいたのか、ガキの喉がひくっとしゃくり上げるように鳴った。
「……やっ、サ、サンジさ、……っ」
「はは、孔までカワイー色してんのな、お前。すっげ美味そう」
「みっ、見んなよ……ッ」
 ガキはもう、赤を通り越してどす黒いような顔色で、腿を押さえる俺の腕を掴もうとしてきた。
 羞恥のあまりか、ふるふると全身を震わせている姿は、凍える小猫みたいだ。あんまり頭が良くなさそうで、気ばかり強くて、でも本当は甘ったれのにゃんこ。自分の連想がハマりすぎて可笑しくて、くく、と思わず喉奥で笑う。
「怖い?」
 すべすべした尻を撫でて言うと、惑っていた目に力が戻る。負けず嫌いで意地っ張り。こういうタイプは扱いが容易い。ちょっとプライドを突いてやれば、簡単に操れる。
「痛くねェようにするつもりだけど、さ。痛ェのが怖ェんなら、ここまでで止めとく?」
「いっ、痛ェのなんか平気だっ……!」
 案の定、挑発に乗ってきた。
 俺は片手を伸ばし、枕元のちいさな棚からローションを取り出した。
「いー度胸。んじゃ、こっからは一緒に気持ちよくなろーぜ?」
 親指でキャップを開け、見せ付けるように高い位置から奴の股間へと中身を垂らした。とろっとした透明な液が、萎えたペニスやその下の玉を伝って、アナルまで濡らしていく。冷たい感触にビクついたガキは、それでも意地を張って俺をじっと見上げてきた。その目は、動揺を隠しきれていないけれど。
 シーツまでベタベタになるほどたっぷりと垂らして、キャップを閉めた瓶を傍らに転がす。そして、徐にアナルへ指を這わせた。
「さ、サンジさんっ……」
「しぃっ。こーゆーマッサージがあんだよ。つかま、準備ってかね」
 ぬるぬると表面を撫でて、爪の先だけを入れてみる。すぐに出してまわりを揉み解し、今度は第一関節まで。
 いたい、とちいさく漏らし、きつく瞑られた目尻に涙を滲ませたガキが、俺の腕に爪を立ててくる。布越しだから傷にはならないが、ちょっと痛い。払い除けようかと思ったが、さすがにかわいそうなので止めておいた。
「力、抜いて。ゆっくり息吐いて……そう。イイコだ、ゾロ」
 優しげな声色で名を呼んでやれば、少し安心したのか、ふっとそこの抵抗が緩んだ。その隙を突いて、指先にくっと力を入れると、ローションのぬめりでずるりと一気に根元まで入ってしまった。
「ひッ――――」
「はは……悪ィ。痛かった?」
「ぅ、うっ……」
 身を竦めて震えているガキは、痛みよりも異物感をひどく感じているようだ。
 痛いんじゃねェなら遠慮は要らないだろう、と判断して、俺は内部に押し込めた指を蠢かせた。苦しげな喘ぎ。でも、意地を張るガキは、嫌だとも怖いとも言わないから。

「――っあ……!」

 様子を見ながら、ソコにそっと触れてやれば、ガキの身体がおおきく跳ねた。ペニスの先が、ぴくんと反応する。
 俺は唇を舐めた。
「ココ、イイだろ?」
「……うそ……っ」
 ガキは目を見開いて、己の身体の変化を呆然と見ている。
 プロをナメんなよ。自慢じゃねェが、そこらの店のオネーサマなんかより、男イかせんのは巧いぜ。指一本ありゃ、十分満足させてやれんだ。
 ナカで指を回転させて奥を解し、一旦抜いてから二本に増やして再度挿入れた。
「くる…し……サンジ、さんっ……」
「我慢してな。ほら――ヨくなってんだろ。勃ってる」
「やぁ、こんなん、うそだっ」
「嘘じゃねェよ。大丈夫、男は誰でもココが弱ェもんなんだから」
 困惑して、恥らって、幼児のように泣きべそをかいてる奴を見れば、かわいそうだとも思うけど。今更、俺だって引けない。
 奴のモノはしっかり天を仰いでいるし、十分ではないがそろそろ大丈夫だろうと踏んで、俺は指を引き抜いた。ぬちゅっ、とローションが粘ついたいやらしい音を立てる。
 思わずといったふうに安堵の息をついているガキの身体を、ゆっくりと引っ繰り返す。
 不意にうつ伏せに返されたガキは、途端に身を強張らせ、不安げな目を肩越しに向けてきた。それに、笑みで返す。
「力抜けって。俺のこと、ナカに入れてよ?」
「……え―――」
 笑みを浮かべたまま、いきり立つペニスを見せ付けると、ガキの表情が戸惑ったものから驚愕のそれへと変わる。この期に及んでも、これから起こることを理解し切れていないらしい。
 俺は構わず、綻びかけた蕾に切っ先を宛がった。
「あ」
 熱に慄き、背がちいさく跳ねる。
「俺のこと好きだろ、ゾロ? セックスしようぜ」
 甘い声で宥め、唇と手のひらで宥め。そうして押し入った内部は、熱くて、あつくて。
 何度も味わった感覚のはずなのに、まるでそれは。
 耳に届いてくるのは、悲鳴。あァ、結局痛い思いさせちまった。処女なのに。
「サンジさんっ……サンジさんっ」
 シーツにしがみついて、必死に呼ぶ声は、涙声。かわいそうに。ちゃんとイかせてやるから。
 あーでも、イイ。こいつの中、すげェ、溶けちまいそう――――。
「ゾロ」
「っ……ア、」
 呼びかけて、ゆっくり腰を揺らせば、悲痛な声音に色が混じる。処女のくせに。でもこうしたのは俺。真っ白な雪を蹴散らして、汚したのは。
 あァ、ゾクゾクする。たまんねェ。
 初モノ好みだったから? 相手がこいつだったから? そんなのはどうでもいい。今、気持ちよければ。
 俺は、気持ちいいことが大好きなんだ。

 

 俺の名を叫んで達したガキを、抱き締めてやって。そのまま意識を飛ばしてぐったりとした身体を、仰向けに返して布団に寝かせてやる。
 一応プロだし、中出しなんてヘマはしてねェけど、ドロドロの身体は気持ち悪いだろうと、仕方なく半端に残っていた服を剥いで、タオルで拭ってキレイにしてやった。
 掛け布団を被せてやって、一息ついてから室内電話に手を伸ばす。

 まずはあの、ロクデナシのアホオーナーに文句を言ってやらねェと。
 それから――このガキを一泊させる手続きも、な。

 

 

 

 

      ――――NEXT

 



中途半端なエロになっちゃった気がする〜(苦笑)
サンジさんが意地悪なのか、ゾロたんが乙女過ぎるのか。
心の中で(本気でなく)かわいそう、と繰り返すくせに、
止めてやろうとは思わないキチク。
無駄に意地っ張りで怖くても言えないお馬鹿ちゃん。
割れ鍋に綴じ蓋っていうか、
まだそんなつもりはなかったのに、すでにバカップルの兆候が…?
つーか、やっと予告漫画に辿り着いたよ…(死)
'08.12.15up


 

 

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