夕暮れ時、訪ねてきた利吉と二人、自室でくつろいでいた半助は不意にそう言われてキョトンとした。 ゆうぬくまり? 「何だいそれ」 夕涼みなら知ってるけど、と首を傾げて訊ねれば、利吉はにっこりと笑って、 「そう、それの逆です。この寒い時期にわざわざ涼むって言うのは変でしょう? だから、こうして――――」 手を伸ばし、半助の身体を引き寄せ抱き締める。あ、と声を上げる間もなかった。 「ち、ちょっと利吉く……」 「――――二人であたたまりましょう。ね?」 夜気にあたり冷えてしまっていた首筋に、戯れのように押し当てられた唇が温かくて、一瞬抵抗を忘れる。期待するかのように震えた身体を誤魔化そうと、小さく頭を振った。 「何言って、こんな時間から……ッ」 相手との身体の間に手を入れ押し返そうとするが、しっかりと抱き込まれてしまえばそんなささやかな抵抗など意味はなく。 更に、その口から告げられた内容に、抗おうという意志さえも奪われてしまった。 「今夜は、長居はできません。数刻後にはここを発たねばならないので」 「え」 「仕事です。長引きそうなので、当分会いに来られそうにありません」 「当分、ってどのくらい……」 「はっきりとは言えませんが、早くても三月以上先になるかと」 「………そんなに」 利吉は売れっ子のフリー忍者だ。わずかでも時間が空けばこうして会いにきてくれるが、それだって頻繁にと言うわけにはいかない。 彼の成功を喜んでやらねばならないと、判っていても寂しくて仕方ない。 常には年上として、先輩忍者として、そんな感情は悟らせないようにしているけれど。 恋人のぬくもりに包まれている今は、そんな理性は働かなかった。きゅう、と利吉の袖を掴むゆびに力がこもる。 「だから……、その前に、あなたを感じさせてください」 利吉は困ったように微笑み、半助さん、と囁く声で呼び掛けた。 そんなふうに言われて、拒めるわけがない。いや、それどころか半助のほうこそ、利吉を感じたくてたまらないのだ。 ズルイ、小さく呟いた唇を、やさしく塞がれた。 「では、わたしはこれで」 「利吉くん」 身支度を整えた利吉が、あなたはまだ休んでいて下さい、と言うのを制して、半助は気怠く重い身体を無理に起こした。 着物を羽織り、心配そうな表情の年下の恋人に、微笑みかける。 「いってらっしゃい。無事に、帰っておいで」 彼の帰る場所は、ここではないけれど。 半助の言葉に、利吉は目を見開き、次いでひどく嬉しそうに笑った。 「はい、いってきます」
利土井Ver.ということでして、これにはカカイルVer.があります。 そっちは『SHURAN』様に捧げました。 そのうちNARUTOページにUPすると思いますが、 SHURAN様に飾られている場違いな代物を覗いてみるのもいいかも(笑) カカイルとは、オチが違います。 『夕温まり』、って響き可愛くないですか?(^^) '04.01.01up
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