つ る 3


「さて、問題のこれらの蔓ですが。……どうします? 土井先生」
 すでに身支度を整えた利吉が、気に絡みついたままの二本の蔓それぞれを交互に見やりながら問いかけた。
「うん、一体どういうものだろうな。持ち帰って調べてみるべきか……」
 努めて平静を装いつつ、半助も先まで己を拘束していた――そうしたのは利吉だったわけだが――切れ端を摘み上げつつ答える。
 生徒もいるというのに、流されてこんな場所で交わってしまったことも充分自己嫌悪だったが、それ以上に伊作と小松田の情交の声やらを聞いてしまったことがかなり堪えていた。普通そこは教師として止めるべきところだったろうに、その時よりによって自分は………。
 それを思うと「ああ――っ」と喚いて頭を抱え込みたくなるので、落ち込むのはとりあえず後まわしにしよう、と前向き(?)に考えることにしたのだった。
「丸ごとは無理ですし、一部分だけでも切り取っていきましょうか。切られても動いていたから、それで充分でしょう」
「うーん、でもなぁ……――――――あっ?」
「えっ?」
 急に奇声を上げた半助に驚いて、彼の手元の蔓を眺めていた顔を上げると、半助が呆然とした表情で利吉の背後を見ていた。疑問に思い振り返って、利吉もそれを目にし絶句した。
 そこには、寄生した木ごと炎に包まれている蔓が苦しげ(??)に蠢いている、という異様な光景が広がっていた。
 そしてその傍らに突っ立っている、小松田の姿。
「こっ……小松田くーん!?」
「なんで刃物は持ってなかったくせに火種なんか持ってるんだキミは――!?」
「へ? だってこの蔓、邪魔じゃないですかー。いけなかったですか?」
「山火事にでもなったらどーするっ!?」
「ま、まだ何も調べてないのに……っ」
 あっさりと言い放つ小松田を怒鳴りつける利吉を横目に、半助はその場にがっくりと膝をついた。
 確かにコレのせいでえらい目には遭ったが、だからってこんな珍しい植物を簡単に燃やしてしまうだなんて……。
 もったいない〜、ときり丸のようなことを呟きつつ、仕方なく唯一残った切れ端を解いた頭巾に包んで懐へ仕舞い込む。明日にでも、新野先生に見せてみよう。コレだけでも何か判るかも。
 とりあえず。
「もう、やっちゃったもんはしょうがない。利吉くん、火を消そう。小松田くんも手伝って!」
「あ、はいっ」
「はーい」

 

 

 何とか鎮火を終え、一同は忍術学園へと戻ることにしたのだが。

「こ、こまつださんっ、いいです、ぼく歩けますからっ」

 ぐったりとしていた伊作が、彼をおぶろうとする小松田に焦り、まだ痛みとだるさの残る身体を起こそうとしている。それを、いつになく強い口調で、「いいから言うこと聞きなさい!」などと叱りつけている小松田。
 結局負けてその背に身体を預けた伊作の顔は真っ赤で、対する小松田はひどく満足げだった。
 そんな彼らのやり取りを微笑ましげに眺めていた利吉は、半助にこっそりと耳打ちした。
「小松田くんがあの蔓を燃やしたの。もしかしてヤキモチだったんじゃないでしょうかね?」
「………なるほど」
 ふたりの様子を見て、半助が頷く。
 教職の身としては応援するわけにもいかないが、しばらくは見守ってやるのもいいかもしれない。先はどうなることかと思ったけれど――あんな激しくまぐわったりしていたので――、なんとも可愛らしく、初々しいふたりではないか。
 利吉と目を見交わしあって、半助も微笑んだ。
「……半助さんも、はじめはあんなふうに動けなくなってましたよね」
「余計なこと覚えてるんじゃない」
「照れなくてもいいのに」
 くすくすと笑う利吉の頭を、半助は無言で小突いた。

 

 

 その後、半助が持ち帰った蔓の切れ端はその日のうちに朽ちてぼろぼろに崩れてしまい、新野に見せても結局その正体は知れず。
 蔓は謎のまま、その存在は四人の記憶の中だけに残されたのだった。

 

おわり。

 

 



蔓は、本体がなくなったため腐ってしまったようです。
結局なんなんでしょうね、この蔓は……
宇宙生命体!?(笑)
ついでに、もしかしたらいさっくんの方の蔓には、催淫効果のある樹液かなんかが…(死)
それはともかくとして、ここまでお付き合いありがとうございました。
コマ伊エロとか書けて、桃木も楽しかったです♪
そしてやっぱり、利土井はイイですね♥
'04.10.12up


 

 

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