「HAPPY BIRTHDAY、イルカ先生。プレゼントは何がいい?」

「アナタが欲しいです」

 


ほしがり


 

 脱いで、と言われた。それが始まりの合図。

「アナタが望むだけ俺をあげるから、脱いで」

 いつもなら、さいしょにキスをされて。何も判らなくなっているうちにいつの間にか剥ぎ取られていたそれを、自分で。
 恥ずかしい。
 恥ずかしい、けれど。
 イルカはぎゅうっと目を瞑って、上着の裾をつかんだ。そのままひと息に脱ぎ捨て、続けてズボンに手をかける。が、そこで動きが止まってしまった。
 カカシの、目が。
 いつになく淫らな色を帯びて、じっと自分を見ている。目を瞑っていても感じる、熱い視線。
「……み、見ないでくださ……」
「どうして。アナタのカラダなら、もっと恥ずかしいとこまでぜんぶ知ってるよ」
 ぶるり、と身を震わせれば、吐息のような笑いが、わずかに空気を揺らす。
「俺を焦らして楽しんでるの? それとも、期待しすぎてて逆に怖いのかな」
 更に、空気が揺れて。ハッと気づいたときには、ベッドに腰を下ろしてこちらを眺めていたはずのカカシが、いつの間にかイルカの背後に立っていた。
 そうっと裸の肩を抱き寄せ、耳元へ唇を寄せる。
「ねぇ。いいこだから、俺がヒドイコトしちゃう前に言うこと聞いて?」
「………ア、……」
 ぞくぞくぞく。
 甘い低音の囁きに、背を駆け上ったのは、紛れもない快感。
 誕生日のプレゼントに、カカシが欲しいと言ったのは自分だ。
 だけどそれは、本当は。

 ――――アナタに、俺を欲しがってもらいたかったんだ。

 震える手を再び動かして、イルカはズボンを下着ごとゆっくりと下ろした。固くなりかけた性器がこぼれ出て、ぷるりと揺れる。肌を覆い隠していたものをすべて脱ぎ捨ててしまうと、イルカは所在無く身を縮めた。
 カカシの言うように、もうとうにすべてを見せてしまっているのだけど。
 恥ずかしい、そう思う気持ちのほかに。
 こんな無骨なカラダを、女性のようなやわらかさなどどこにもないカラダを、カカシがいつまで求めてくれるのか。
 それを思えば、たまらなかった。
 自分のようなむさくるしい男を、好きだと言ってくれたカカシ。その言葉を、やさしい微笑みを疑うわけではないのだけれど……。
 ちゅ…。
 カカシの唇が、首の付け根あたりに触れる。そのまま、ゆっくりと下りていった唇は、イルカの背の、いちばんおおきな傷痕で止まった。
 ナルトを庇ってついた傷。いまはもう塞がっているけれど、きっととても醜い痕を残しているだろうそこにカカシは何度もくちづけ、その形を辿るように舌を這わせた。
 まるでイルカの心のなかを読んだかのように。
 こんなに醜い傷さえも、愛せるのだと。
「っカカシ、先せ……」
 じわり、と目の奥が熱くなる。姿かたちが美しいわけでもない、それどころかあちこち傷だらけのカラダなのに。
 カカシほどの容姿と実力を兼ね備えた上忍ならば、どんな美女も容易く手に入れられるはずなのに。
「なにも考えないで、イルカ先生」
 いつの間にかイルカの背後で膝立ちになっていたカカシが、するり、とその手を前へとまわす。
 しっかりと天を向いて存在を主張しているものを、ゆるく握りこむ。
 息を呑んだイルカの耳に届いたのは、ひどくやさしげな響き。
「――――ッアア!」
 ぐっと双丘をつかみ割られて、その奥に隠されていたちいさな蕾を暴かれる。前への刺激に気を取られ、まったくの無防備だったそこへ、ぬるりとした生あたたかい感触。
 振り返って確かめるまでもない。――――カカシの、舌だ。
 襞の数を確かめるように丁寧に舐め、尖らせた先端でつつく。その間も、性器を擦り立てる手は止まらず。
 たまらず、イルカは前のめりになり、ベッドの縁に両手をついてしまった。崩れかけた膝を、カカシが腰をつかんで支える。
「ん、あっ、ダメッ、もぉ……っ」
「もう、欲しいの?」
 言いざま、カカシの唾液でぐしょぐしょに濡らされた後孔へ、つぷ…と指が差し入れられる。浅く、入り口のあたりで掻き混ぜるように回転させながら、二本目の指もすぐにそこに加わる。
 解すというよりも、まるでイルカを焦らしているみたいだった。
「かわいいかわいいイルカ先生。欲しいものは、ちゃんと口に出して言わなきゃダメだよ」
 いまにも弾けてしまいそうなイルカ自身から手を離し、先走りで濡れた指で胸の尖りを摘み上げる。ぬるぬると両胸のそれを交互に弄られて、イルカが甘く鳴いた。
 これが欲しいんでしょう、言葉とともに内部を犯していた指が抜かれ、ひくつくそこに押しつけられた熱。
 イルカは必死で、コクコクと何度も頷いた。
「それっ……下さいっ! はやく、カカシ先生の、俺のなかに挿れて……っ!」
 叫びは、中途で掠れた悲鳴に変わった。ひと息に根元近くまでを呑み込まされた秘部が、痛みを訴える。
それなのに、それ以上に強く感じたのは、ようやく求めていたものを与えられたという、歓喜にも似た想い。
 膝をつき上体を伏せて、尻だけを突き出す獣のような姿勢で交わりながら、イルカは悦びの証を床にぶちまけていた。
 達しても、まだ足りないと言わんばかりに、イルカの性器は固いままで。
「欲しがりだなァ、イルカ先生は」
 無理矢理首を捻じ曲げてキスをねだる恋人に応えてやりながら、カカシはいとしげにその肌を撫で擦る。

「約束、したものね。いっぱいいっぱい、俺をあげるよ」

 とろりとした瞳で嬉しそうに微笑うイルカに、欲は尽きなくて。まだ熱を留めたままの性器を最奥へと突き入れてやれば、たちまち上る嬌声に知らず口端が上がる。
 かわいいひと。
 もっと、俺を欲しがって。

 

 

 ――――本当の欲しがりは、どっち?

 

 

 



去年、オフでイルカ先生誕生日本としてコピーで発行しました。
5月のインテ、6月のオンリーと名古屋、の三回のイベントのみで販売。
一年経って、ずるっ子更新です(死)。
一応、エロだし本もR−15だったんで裏に…。
ちなみに冒頭は、イラスト(?)付きで、科白?でした(「?」多いよ!)
つか、イラストってか表紙でした。
'06.05.26up


 

 

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