あのさあのさ。
 太陽――――って、どんなん?

 大っきくて、あったかくって、眩しいくらい明るくって、力強い。

 だから、俺の『太陽』は、イルカ先生以外考えらんないんだってばよ。

 

 ぼくだけの太陽

 

「イールッカせーんせ―――!!」

 気付いてもらえるように、豆粒サイズの時から大っきな声で呼ぶ。
 それから、追いつけるように猛ダッシュ。
 イルカ先生は、俺の声が聞こえれば立ち止まって待っててくれるから、そんな急がなくっても大丈夫なんだけど。
 目の前まで来ても止まらないでそのままタックルみたいに腰に抱きつくと、イルカ先生はちょっとだけよろけたけどコケずに俺を受け止めてくれる。
「ナルト! 久しぶりだなァ、元気にしてたか?」
「もっちろんだってばよ!」
 そっかー、っと嬉しそうに笑う先生の声が好き。
 ぐしゃぐしゃって頭撫でられて、「痛いってば!」って文句を言うけど、ホントはそうやって撫でられんのも好き。

 イルカ先生が、大好き。

 俺さ、俺さ。
 確かにすっげー目ぇ良いんだけどさ。
 うんと遠くからでもイルカ先生見つけれんのは、目のせいじゃないんだってばよ。

 だって、どんなに遠くでも、イルカ先生のぽかぽかあったかい空気が――チャクラとは違う気がすんだけど、よく判んねえや――俺には判っちゃうんだってば。

 


『イルカ先生が太陽なら、アンタはひまわりね』
『サクラちゃん、それってばどういう意味?』
『アンタ、知らないの? ひまわりってね、太陽を見上げて、太陽に向かって伸びてくのよ』

 

 こないだ、サクラちゃんに言われたコトを思い出す。
 手を、伸ばす。
 イルカ先生は、太陽。だったら、イルカ先生のこといっつも見てる俺は、サクラちゃんの言うとおりひまわりなのかな。
 だけど、だけどさ。
 イルカ先生は、俺だけの太陽じゃない。ひまわりは、俺の他にもいっぱいいるんだってば。

 ぺとり、イルカ先生のほっぺたに触ってみる。あったかくって、意外にすべすべしてる。
「んー? ………どうしたナルト?」
 イルカ先生が不思議そうな顔してる。
 次に、背中に手を回してぎゅってしてみた。
 変な奴だなぁ、笑う声が直接身体ん中に響いてくる。気持ちイイ。
 ――服の上からで判んねぇけど、イルカ先生の背中には大っきい傷がある。ミズキから、俺のこと庇ってくれた時ついた傷。
 他にも小さい傷なら、もっといっぱいあちこちにあるケド。

 この傷は、俺だけのもの。
 イルカ先生についた傷の大きさだけ、イルカ先生の中に『俺』がいる気がする。

「イルカ先生ぇー。俺ってば、強くなったんだぜ?」
「あ? ……ああ、そうだなぁ。カカシ先生も言ってたぞ、頑張ってるみたいじゃないか」
「いつか、カカシ先生のこと追い越してやるんだってば」
「ははは、そりゃあ頼もしいな。ま、その前に俺を追い越してからだけどなァ」
 へばりついてる俺の頭をぐりぐりしながら、楽しみだなぁと笑ってるイルカ先生。

 先生は、気付いてない。
 俺が、どんな気持ちで「カカシ先生を追い越す」って言ったのか。

「よーし、今日は久しぶりに一楽行くか! なぁ、ナルト!」

 笑うイルカ先生の右耳の下、俺の知らないアトがある。
 俺は見ない振りして、はしゃぐ振りして、イルカ先生より先に歩き出した。

 

 

 …………………俺の太陽を、とらないでよ。

 

 

――――――end

 



カカイルでナル→イルってとこでしょうか…
『太陽のひとかけら』で出会った二人が何やかんやでくっついた後のお話。
てかそんな目立つとこに跡つけんなよ上忍!!
そして気付いたんならさり気なく教えたれや下忍!!(笑)
イルカ先生、いつまで気づかないんでしょーかね…?
とりあえず、ゴメンなナルト。あたし、元はナルイルだったのにね…。
'03.06.11up


 

 

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