SWEET NIGHT? |
---|
「はっぴーばーすでーリョーマ様っ!」 元気いっぱいな言葉とともに、じゃーん!と白いおおきな箱を開けると、現われたのはイチゴが乗った真っ白なケーキ。真ん中に、おそらくラケットを模ったチョコプレートが飾られており、そこには「HAPPY BIRTHDAY」の文字。 やたらとデカイそれに、リョーマが思わず絶句する。 「それからー、こっちが! リョーマ様のための、和風オードブルでーす♥」 朋香は楽しそうに、今度はこれまたおおきな丸い皿の蓋を開ける。そこには煮物だの天ぷらだのといった、和食中心の小皿料理が詰め込まれている。 朋香の料理の腕は認めているし(彼女の作る煮物はリョーマの好物だ)、確かにどれも美味しそうだ。しかし。 「……こんなにだれが食べるワケ?」 ――――――ここはリョーマの家である。 両親はクリスマスディナーに出かけ(息子の誕生日などきっと忘れているのだろう、特に父)、従姉の菜々子は友人宅のパーティに呼ばれていった。 つまり、クリスマスイブ兼リョーマの十六歳のバースデーという日に、ふたりきり。 ケーキや料理もいいが、そんなものよりも。 「俺、アンタのがいいんだけど」 「へっ?」 さっさとケーキにろうそくを刺し、火を点けようとしていた朋香が、間抜けた声を上げる。 きょとんと首を傾げる動きに合わせて、トレードマークのツインテールがひょこりと揺れた。 「……先に、朋香が食べたい」 言って手を伸ばせば、真っ赤になった朋香がライター(越前家にあった物だ)を取り落とした。 「リョ……っリョーマ様っ!?」 「”様”はナシ、だろ」 うろたえたいる朋香の顎に指をかけ、唇を寄せる。リップだろうか、甘ったるい味が唇から感じられる。それよりも甘い、朋香の口腔内を味わうべく、薄く開いた隙間から舌を滑り込ませる。 んっ…とちいさく漏れる声に、最初は半ば冗談で仕掛けたはずだったリョーマの欲が煽られる。 「今年のプレゼントは、朋香をちょうだい」 ざっくりと編まれた水色のセーターの裾から、そうっと手を忍ばせる。ひゃっ、と短く悲鳴を上げて身を竦ませたのは、たぶんリョーマの手が冷たかった所為ばかりではないだろう。 触れた素肌は、滑らかで触り心地が好く、もっともっと触れたくなる。 「リョ…マ、あたし……っ」 ぽうっと頬を赤らめ、身を固くしながらもリョーマの体重を受け止め、されるがままに畳の上に倒された朋香だったが。 不意に、ハッとしたように潤んだ瞳に正気の色が戻った。 「ダメ――――!!」 腹部が覗くほどにたくし上げられていたセーターを引っ張って戻し、もう一方の手でリョーマの胸を思い切り押し返す。 突然拒絶され、憮然としたリョーマを、半泣きで見上げて、 「今日はダメ! ……あたし、今日、下着が可愛くないのッ!!」 「……何ソレ。どーだっていーじゃん、そんなの」 「良くなーいっ! もう、どーしてリョーマ様っていっつも急なの!? 最初に言っといてくれたらいーのにっ」 朋香が頬を膨らませるが、あらかじめ「今日、襲うから」などと宣言する男がどこの世界にいると言うのか。 ってゆーか付き合って三年のカップルがイブにそーゆーことになるかもってくらい、フツー予測できない? リョーマはむっつりとした表情で、仕方なく妥協案を提示した。 「じゃあ明日のクリスマス、今度こそもらうから。……俺からのプレゼントも、今日はお預けね」 「えー!? リョーマ様、プレゼント用意してくれてたの!?」 見たい見たい、今くれてもいーじゃないケチー!と騒ぎ立てる朋香に、明日はちゃんとそのカワイイ下着っての着けてきてよね、と言うと、ぴたりと黙り込んでしまった。 用があるのは中身だけど、そんなに言うならちゃんと見てやるから。 そう、にやりと笑って続ければ、真っ赤になった朋香に「リョーマのH!!」と思い切りクッションを投げつけられた。
|