立入禁止☆




 悟空はテーブルに上半身を凭せ掛け、椅子を傾けてガタガタと揺らしていた。
「……腹減ったなぁ……」
 少しバランスを崩せば椅子どころかテーブルまで巻き込んで床に転がってしまいそうな、かなり危険な体勢で、口を突いて出るのはいつも通りのセリフ。
 でももう少ししたら、八戒が料理を運んで来てくれる筈。そしたら三蔵や赤ゴキブリ河童も集まって、夕食を―――
「うるせえっつってんだろっ!」
 突然廊下から聞こえてきた若い女性の怒鳴り声に、悟空は椅子から転げ落ちた。
 一応、テーブルは無事だった。――いや、そんなことは良いとして。
 未だに聞き慣れない、高くて少しハスキーな声。あれは……。
「……三蔵?」
 強かに打ちつけた腰を擦りながら身を起こした悟空が、思わずその名を呟く。
 またエロ河童がナンかしてるのか、だとしたら助けに行かねばと――何しろ今、彼の飼い主はか弱い女性の姿になってしまっているのだ――勢いよく立ち上がってドアを開けた、途端。
「良いから言うこと聞いて下さいっ!」
 とっても珍しい、声を荒げる八戒の姿、と言うものを目にしてしまった。
 しかもその言葉は、横暴とも取れるような内容で。
 悟空は呆然とその場に立ち尽くす。一体、何ごとだと言うのだろう。
 八戒に叱りつけられた三蔵が、いつものようにどこからともなくハリセンを取り出す。可愛らしいピンク色のそれの柄から伸びている細い紐の先についた鈴――耳にリボンをつけた白い猫の形をしている――が、チリリン、と鳴った。
 悟空は自分に向けて振り上げられた訳でもないのに、咄嗟に目を瞑ってしまっていた。
 だが、いつまで経っても少し小さめのそのハリセンは八戒に振り下ろされることはなかった。
 そう言えば女になる前から、三蔵が八戒を殴っているところなんて悟空は見たことがない。何となくホッとする。
 当の三蔵は、どうしても八戒を殴れないことに悔しそうな表情で、上目遣いに八戒を睨んでいる。
 そんなことを思っていると知れたら、それこそハリセンでぶん殴られまくるだろうけれど。
 悟空はそんな三蔵を可愛いかも…などと思っていた。
「ダメですよ、そんなカオしても」
 幾分和らいだ表情で、それでも八戒はキッパリと言い切る。
「………わかった」
 やがて、三蔵が観念したようにそう言った。
「判ってくれて嬉しいです。さ、じゃあ行きましょうっ」
 八戒は急に上機嫌になると、三蔵の手を掴んで隣の部屋へと入って行った。
 展開についてゆけず、ポカンと口を開けたままそれを見送った悟空の肩を、いつの間にかすぐ傍にいた悟浄が叩く。
「ったく、犬も食わねーっつんだよなぁ」
 呆れたような口調でなぁ、などと相槌を求められても、悟空は戸惑ってしまう。
「え何、どーしたんだあの二人??」
とりあえず何やら事情を知っているらしい悟浄に訊く。
「いや三蔵チャンの格好がさ。ちょっと露出度が高すぎるっつって、八戒の奴が服買ってきたらしーんだよ。けど三蔵チャンはそれがお気に召さなかったってこと」
 俺はそのままのがいーんだけどなー、などとつまらなそうに溜め息をつく。
 確かに、女の姿になってから、三蔵は胸元が苦しいと言って法衣の下にアンダーを着けていないことが多い。
 しかし。
「……てか……それでケンカ……?」
 悟空は、ますます空腹感が増した気がした……。






リク内容は「三蔵チャン」で、
「ケンカ」「ギャグっぽく」ってことでした。
三蔵チャンのオプション(笑)のハリセンは、
…そうです、キ●ィなんです♥
観音、キ●ィラー?(爆死)






モドル