A Chestnut in Bur




 一行がその森に迷い込んだのは、既に夕方と言って良い時刻だった。
 視界は悪くなる一方で、
「……おかしいですね……」
 ジープを止め、地図を眺めながら八戒が独りごちる。本格的に迷ってしまったようだ。
 結局朝まで動かないのが賢明ということで、ここで野宿することになった。
 先程まで空腹のあまり後部座席に沈んでいた悟空が、いきなり勢い良く立ち上がった。
「八戒っ! 俺、栗ご飯食いたいっ!」
 見渡せば周りには栗の木が立ち並んでおり、どうやらその匂い(?)で元気を取り戻したらしい。
「そうですね、じゃあ悟空……と、悟浄。栗をたくさん拾って来てくれますか?」
「おうっ!」
「え〜〜、何で俺よー?」
 笑顔で言った八戒に上機嫌で答える悟空。当然のように自分の名を連ねられた悟浄が、不満の声を上げる。
 しかしそれ以上ごねれば三蔵が発砲するのは目に見えていて、仕方なくぶつくさと文句を言いつつ、張り切って先を行く悟空に続いた。


 食事の準備を始めた八戒の傍らで、全く手伝う気のない三蔵は眼鏡を取り出し、新聞を広げた。しばしの静寂。
 と。
「……ッ!」
 小さく息を飲む音に三蔵が顔を上げると、八戒が指先を押さえていた。その手元に、毬栗が一つ。
 何が起こったかを察した三蔵は、新聞を畳んで立ち上がり、八戒の手を取った。
「見せろ」
「……あ」
 人差し指に、小さな紅い点が二つ。大した傷ではないことを確かめると、
「さっ……三蔵っ!?」
 傷付いた指先を、口に含んだ。
 動揺する八戒を無視して舌で嘗め上げながら、上目遣いにその表情を窺う。見事なまでに真っ赤になっているのを見て、揶揄うように口の端を上げた。
 ゆっくりと離れる唇。
「三蔵……」
 誘われるように、八戒の唇が近づく。触れ合おうとした、瞬間。
「はっかーーいっ! 見て見て、こんなにあったよーっ」
 ナイスタイミングで食料調達班(笑)が戻ってきた。
 力が抜けてがっくりとその場に膝をついてしまった八戒から、さり気なく離れた三蔵が、両腕いっぱいに栗を抱えた二人に一言。
「遅かったじゃねーか」






暇潰しに八戒を煽って遊ぶ三蔵…;
リクは、行楽…だったのですが。
どうやら、ちょっと…いやかなり外した模様。
ご・ごめんなさい…ιι






モドル