いじわる



「ほどほどになさいよ」

 ナミさんに言われて、「何のこと?」と笑顔でかわしたら、溜め息をつかれた。
 とりあえず、「そんなナミさんもステキだ♥」とハートを飛ばしておいた。
 ま、お約束ってヤツだ。


 今日も、もう何度もゾロと目が合った。
 視線がぶつかるたび、その目は鋭くなり、すぐにフイと逸らされる。
 昨日は「何見てやがる」と噛みつかれた。まるで警戒心の強い猫みてェだ。思って、笑う。
 ナミさんにお茶を淹れ、オーバーアクション付で彼女の美を称えつつ、視線を向けると、また。
 今度はこちらから目を逸らして、我ながら人の悪い笑みを浮かべていたのだろう、ナミさんに咎められた。

「楽しそうね、サンジ君」
「何がだい? ナミさん♥」

 にっこりと笑ってみせる。
 ナミさんがほんの少し、眉を寄せた。

「まァ――私には関係ないけど。意地悪よねェ」

 ほどほどにしておきなさい、と俺に釘を刺し、ナミさんは優雅なしぐさでその可憐な唇をカップにつけた。

 

 

 キッチンへ戻る途中、トレーニングを終えたらしいゾロと鉢合わせた。
 何やら苛立っている様子で、俺を睨んでくる。

「何だよ」
「……またナミのご機嫌取りかよ。あんなワガママ女に尻尾振りやがって、馬鹿みてェ」
「ナミさんを悪く言うんじゃねェ。……んたよ、ヤキモチかぁ? マリモ君?」

 珍しくも向こうから露骨にケンカを売ってくるので、買う代わりにからかうように言ってやった。
 と、クソ剣士はカッと赤くなって。

「誰がナミになんか妬くかよ!」

 怒鳴るなり、足音も荒く立ち去った。
 その背中を見送りながら、込み上げてくる笑いに肩を震わせる。
 何て可愛い奴。
 自分じゃ気づいてねェんだろうな、思うと可笑しくてたまらない。


 ほどほどにって言うけどね――ナミさん。
 ヤキモチと聞いて、『俺に』じゃなく『ナミさんに』妬いている、と無意識に、当然のように受け取っているアイツが。
 頻繁に目が合うのは、俺が見ているのと同じくらい、自分も俺を見ているせいだと、まったく気づいていないアイツが。

 かわいくて、かわいくて。

 だってさ。
 本当に、てめェの気持ちに気づいてねェんだよ、あのアホマリモ。
 俺やキミが思う以上に純粋培養なおヒメサマは。
 目が合った瞬間、ひどく切なげな表情をするくせに。
 俺を独占しているナミさんに、判りやすいくらいあからさまに妬いているくせに。
 よっぽど認めたくねェのか、ホンモノの天然ちゃんなのか。それとも脳ミソまで筋肉でできてんのか。

 ついつい、いじめたくなるのは、しょうがねェと思わねェか?

 そりゃあ。
 こんなにクソかわいいアイツを、さっさとモノにしちまいてェとは思う、けど。
 どーやって絡め取ってやろうかなんて、考えてみたりもする、けど。

 今は、もう少し焦らして、焦らして。


「意地悪よね」

 呆れたように言う、ナミさんの表情を想像して、俺は笑う。
 そうだね、キミの言うとおり。
 ゴメンな、おヒメサマ。
 てめェの『王子サマ』は、好きなコほどいじめたくなるサディストなんだよ。


 ああ、


 泣かしてェなァ、クソ剣士。



THANKS!

 

 



ありえないほど長いこと置きっぱになってたWeb拍手お礼SSSその4。
途中で、ボーボボより変更されました。
コンテンツ作ったばっかで、どうしても拍手お礼文に加えたかった。
ランダム表示するには、5か10お礼画面が必要だった(確か)ので。
Sなサンジさんと、鈍感なゾロたんが好きなんです…!!
'08.09.08up


 

 

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