花火とライバル



 朋香の傍にいつもいる、朋香の親友。
 自分よりもずっと昔から朋香を知っていて、自分よりずっと朋香に近い。
 アイツが、苦手だ。


「ねぇねぇリョーマ様! 今度の日曜、練習何時まで?」

「……6時までだけど」

 昼休み、恋人になったばかりの少女が目をキラキラさせて訊ねてきた。
 彼女の作ってきた弁当をつつきつつ答えれば、
 良かった!と、両手を合わせて、

「その日、花火大会があるんだって! 夜店とかも出るのよ、ねぇ行こーよリョーマ様!」

 彼女――朋香があまりにも「楽しみにしてます!」と言う表情をするので、リョーマは断ることができなかった。
 まあ、恋人からのデートの誘いを断る理由もないのだけれど。

「別に……いーけど」

「やったー! 浴衣着ちゃおうっと!」

 断られるなんて思っていなかったくせに、朋香は本当に嬉しそうに笑って、大はしゃぎしている。
 浴衣、という単語に、リョーマが反応する。
 普段見られない彼女の姿を見られるというのは、ちょっとオイシイかもしれない。
 面には出さず、リョーマもまたその日を楽しみに思った。
 だが。

「桜乃も、新しい浴衣買ってもらったんだって! きっとすっごく可愛いわよ。リョーマ様、両手に花だね!」

 にこにこと言う朋香に、リョーマの箸が止まる。両手に花。確か、その意味は。

「小坂田。……竜崎も誘ったワケ?」

「もっちろん! 桜乃とは毎年一緒だもの。桜乃も、リョーマ様が一緒でもいいって言ってくれたし!」

 ――きっと、朋香にはいつもの人の好さげな笑みでOKしたのだろう。
 そんな桜乃の内心が、手に取るように判る。リョーマも同じ気持ちだからだ。

「日曜日、楽しみだねーっ!」

 機嫌よさげに水筒からお茶を注いで渡してくる朋香に、「サンキュ」と返しながら。
 受け取ったコップに口をつけつつ、リョーマは決意を固めていた。


 絶対、どっかで撒いてやる……!


 朋香の恋人は自分なのだから。
 彼女とふたりきりで花火を見上げるのは桜乃ではなく自分だ、と脳裏に浮かぶ少女の影を、思い切り睨んだ。



THANKS!

 

 



ありえないほど長いこと置きっぱになってたWeb拍手お礼SSSその4。
桜乃はそれほどでもないんですが、王子がかなり意識してます。
普段はテニスばっかなくせにね!
朋ちゃんは、桜乃の気持ちを知らないので、お気楽です。
'08.09.08up


 

 

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