おさんぽ



「金吾金吾ぉ。ナメクジさんたちのお散歩、一緒に行こぉ?」

 嬉しそうに、ナメクジの入った壺を抱えて喜三太が言う。
 誘われた金吾は、わずかに顔を引きつらせた。
 喜三太のことは、大好きだし。
 喜三太と散歩するのは、楽しいし嬉しい。
 ……だが。
 慣れてきたとはいえ、金吾はナメクジが大嫌いなのだ。

「え……。えーとぉ……」

 断りたいけれど断りたくなくて、金吾は微妙な愛想笑いを浮かべた。
 そんな金吾の様子に、喜三太は悲しそうな表情になった。

「金吾……。ぼくとお散歩、イヤなの……?」

 うるうると潤んだおおきな瞳に見上げられて、ウッと詰まる。
 その可愛らしさにドキドキしつつ、金吾は慌てて両手を顔の前で振った。

「ちっ、違うよ。喜ィくんとお散歩するのは全然っ、嫌じゃないよ!」
「ほんとぉ?」

 ぱっ、と明るくなったその表情が眩しい。
 喜三太は壺を片手に抱えなおして、空いた手で金吾の手をぎゅっと握った。
 途端に真っ赤になった金吾に気づかず、「じゃあ行こ!」と歩き出す。
 大人しくそれに従い、金吾は照れながらも嬉しげに喜三太の手を握り返した。
 たぶんまだまだ、自分は喜三太にとってはナメクジの次。
 でもそれでも、喜三太の中ではずいぶんと特別な位置にいると自惚れている。
 だから。

「喜ィくん、好きだよ」
「ぼくも金吾、だぁい好きーv」

 にこっと無邪気に笑って応えてくれる、今はそれだけで充分しあわせ。



THANKS!

 

 



長いこと置きっぱになってたWeb拍手お礼SSSその3。
今回はそれほど放置せずに済んだかな?(苦笑)
かわうい、お子ちゃまの恋その2。
金吾ちゃん、微妙に報われてるようなそうでもないような。
喜ィちゃんの中でナメクジより上位になれるのは、果たしていつでしょうね?
…頑張れ、金吾。(苦)
'06.09.25up


 

 

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