さみしい笑顔



『お前の気持ちが判るなんて言わないよ』


 サスケは、ナルトとともに、上官であるカカシに課せられた修行に勤しんでいた。
 と言っても、同じメニューを同じ演習場でしているというだけで、協力どころか声を交わすこともしていない。
 ふたりともに完全に個人プレーだった。
 サクラは別メニューを言いつけられ、少し離れたところでそれをこなしている。
 強くなりたい。
 ただその一心で、修行に没頭していた時だ。

「おう。おまえたち、頑張ってるか?」
「イルカ先生!!」

 アカデミー時代の担任・イルカが笑顔で現われ、ナルトの集中力はたちまち殺がれた。
 主人を見つけた犬のように、見えない尻尾を振って駆け寄っていく。
 いつもと同じ調子で抱きつこうとしたナルトを、しかしカカシが襟首を引っ掴んで止めた。

「ぐえっ! ……何すんだってばよカカシ先生ぇ!!」
「イルカ先生と見るとすぐ抱きつく癖、いい加減直しなさいよ。ガキ」
「〜〜〜〜〜っ!! うるせえってばよー!!」
「こら、ナルト。先生にそんな態度取るんじゃない」

 カカシの挑発に乗ってぎゃんぎゃんと喚くナルトを、イルカが苦笑して宥める。
「だって」と不満げなナルトの頭を、イルカの手が優しく撫でる。
 まだむくれながらも、ナルトは気持ちよさそうにその手に頭をすり寄せた。
 まるで親子のような、ふたりの様子を見るカカシの目が笑っていないことに、多分サスケ以外は気づいていないだろう。
 ナルトの頭を撫でまわしながら、ふとサスケの視線に気づいたらしいイルカがこちらを見た。
 にこりと、笑う。
 サスケはプイ、と顔を背けた。


 アカデミー生だった頃。
 まだ新米教師だったイルカに、無茶な修行ばかりしているのを咎められたことがあった。
 ひとしきり説教したあと、イルカはむくれるサスケの頭をポンポンと叩いて、「俺も子供の頃肉親を亡くしたんだ」と言った。

「だからって、お前の気持ちが判るなんて言わないよ。お前と俺とでは事情が違いすぎる。でもなあ、独りだなんて思わないで欲しいんだ。少なくとも俺は、いつでもお前のことを気にかけてんだからな」


 ――――本当に、アンタには判らないんだな。

 あの時と同じ笑顔を向けるイルカ。
 だがその笑顔は自分のものでも、ましてナルトのものでもない。
 期待など、はじめからしていなかったはずなのに。

 カカシの隣に在るイルカの姿が、サスケには寂しくてたまらなかった。



THANKS!

 

 



長いこと置きっぱになってたWeb拍手お礼SSSその3。
今回はそれほど放置せずに済んだかな?(苦笑)
基本、私はナル×サス×サク派なのですが、
サスイルは結構嫌いではないです。
「お前の気持ちが判るとは言わない」と言うイルカ先生が書きたかった。
そんなイルカ先生だから、サスケも心を許したんじゃないかなー、と。
'06.09.25up


 

 

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