闘の書設定 仔カカイル



 カカシは草原で寝転がり、ぼんやりと空を眺めていた。
 中忍になって一年。
 七歳という年齢の所為か、まだあまり大層な任務はまわってこない。
 回数だけをこなしている状態だ。
 けれどカカシにしてみれば、どれも簡単すぎてつまらないものばかりで。
 今日も失せ物探しのDランク任務を二件早々に片づけ、こうしてゆっくりのんびりと昼寝をしているところだった。

 うとうとしかけていたカカシは、ふと何かの気配を感じて目を開けた。
 幼いとはいえ中忍。どんな時でも周りへの注意は怠らない。
 しかしその気配に害意はなく、小動物か何かだろうともういちど目を閉じようとした時。

「おにーちゃん、どっかいたいの?」

 言葉とともに、ひょこりとちいさな子供がカカシを覗き込んできた。
 頭の天辺でちょこんと結わえられた黒髪に、おおきな瞳、鼻の傷が印象的な子供だった。

「……別に。寝てただけだよ」
「わー、ひたいあてだぁ! おにーちゃん、にんじゃなんだ、すごーい!」

 カカシの額当てに気づき、子供は大きな瞳をキラキラさせて見つめてくる。

「ぼくのとーちゃんとかーちゃんも、にんじゃなんだよ! ぼくもねえ、おっきくなったらにんじゃになるんだー」

 にこにこと話しかけてくる子供を、最初は鬱陶しく思っていたカカシだったが、あまりにも無邪気な様子に、いつの間にか笑みさえ浮かべてしまっていた。

「おまえ、忍者になって何したいの」
「うんとね! にんじゃになって、かいじゅうをやっつけるの!」

 見たところ、子供は三〜四歳。
 年相応のスケールの大きな夢に、カカシは笑った。

「じゃあ俺も、その時は手伝ってやるよ」
「ほんとう!?」
「うん」

 じゃあやくそく! と、子供がちいさな小指を差し出してくる。
 戸惑うカカシの手を引っ張って、小指同士を絡める。

「ゆーびきーりげんまん、うーそつーいたら、はーりせんぼんのーますっ」

 そして満足げに笑うと、やくそくだからねー、とおおきく手を振って、子供は走り去ってしまった。
 それを眩しく思いながら見送っていたカカシだったが。

「…………あ。名前きくの忘れた」

 これでどうやって約束なんて守れるんだよ、と頭をかいた。
 それでも。
 いつかもういちど、あの子に会えるといいな、と思った。


 ふたりが晴れて再会を果たすのは、それから二十年近くも経ってからのことだった。



THANKS!

 

 



長いこと置きっぱになってたWeb拍手お礼SSSその2。
て、同じようなことばっか書いてもなー。
当時(?)カカイル界を揺るがせた闘の書。私は賛成派!
てわけで、ハヤイルとか、こんなんとか書いてみたわけです。
もう今ほとんどの人、なかったことにしてるっぽいなー…(悲)
'06.06.12up


 

 

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