闘の書設定 ハヤイル



「よう、ハヤテじゃないか」
「………イルカ」

 ふたりが顔を合わせたのは、昼食時のアカデミーの食堂。
 互いに、連れがいた。

「なに、お前ら知り合いだったのかよ」
「ゲンマ、知らないんだー。ハヤテとイルカって下忍時代スリーマンセル組んでたから、仲いいのよ」
「へえ、そうなんだ」

 ゲンマの問いにアンコが答え、アオバが頷く。
 イルカの連れの中忍たちは、先に席を確保しに行ってしまっている。
 ゴホン、と咳をひとつ。
 ハヤテはイルカに笑みを向け、「良ければ久しぶりに今夜飲みませんか」と誘った。
 イルカは嬉しそうにコクコクと頷き、「じゃあ他の奴らにも声かけとくよ」と言うと、ハヤテと同席していた者達に一礼して、同僚たちの待つ席へと足を向けた。


 その日の夕刻。
 連れ添って酒酒屋へ入っていくハヤテとイルカを、ゲンマが見かけた。
 暇だし仲間に入れてもらおう、と続いて入っていくと、ふたりはカウンター席に並んでおり、テーブル席でなぜか身を潜めている中忍数人を見つけた。
 何となくこっそりとそちらへ向かい、「何やってんだ?」と問うと。

「あ、ゲンマさん」
「いや、ちょっとあいつらのことが気になったもんで」
「なら一緒に飲みゃいーじゃねえか」
「いやいや! そんな野暮なマネできませんて」

 ゲンマの言葉に、「とんでもない!」と全員が大げさに両手を振る。
 その様子にゲンマが首を傾げると、ひとりが説明を始めた。

「あのふたり、昔っからなんかイイ感じなんスよ。つーかもう、だれが見てもウザいくらいイチャイチャってゆーか。だから俺らとしては、見守ってやりたいっつーかですねー」

 その間も、残りの者たちはそれぞれ酒を手にしつつ壁に張り付くようにしてふたりを窺っている。
 見守っているというより、ただのデバガメじゃねえのか…とゲンマは思った。
 しかし、ゲンマもこういうことは嫌いなほうじゃない。彼らに倣い、息を潜めた。

「ホンット、久しぶりだよなあ! お前と飲むなんてさー」
「ええ。……でも他の方たちはどうしたんでしょうね? 全員急な任務が入るなんて」
「……けど、俺はちょっと嬉しいかな。その、お前とふたりで……さ」

 照れたように鼻の傷をかくイルカ。
 突然の甘やかな雰囲気に思わず身を乗り出すデバガメたち。

「イルカ……」
「今だから言うけどさ、俺……昔ハヤテのこと好きだったんだよな」

 ハハハッ、と笑うイルカに、
「今更何言ってんだ」と言いたげに顔を見合わせたデバガメ中忍たちだったが。

「………私も。イルカのこと好きだったんですよ」
「えっ嘘ッ!?」

 ガタン、と思わずのように立ち上がるイルカ。
 逆に聞き耳を立てていた中忍たちはその場にバタバタと倒れた。
 中には「はあ!?」と大声を上げ、隣にいた奴に殴られる者もいた。
 そんな彼らのことにも気づかず、ハヤテとイルカははじめて知った互いの気持ちに照れて、安居酒屋にそぐわぬ桃色な空気を作り出している。
「今頃かよ!」「あいつらくっついてたんじゃねえのかよ!」など、口に出さずに突っ込みを入れる中忍たちを眺め、ゲンマはつまらなそうに呟いた。

「ってゆーかそれ以前に、あいつらカンペキ過去話じゃねーの?」



THANKS!

 

 



長いこと置きっぱになってたWeb拍手お礼SSSその2。
これまた仕舞いっぱに…(苦笑)
あーも、次こそは放ったらかさないぞー!
…てゆーか、そろそろ今のヤツも変えないとだよね(汗)
ハヤイルっていうのはですね、
闘の書のイルカ先生の設定だと同じ年にアカデミー卒業なんですよ!
そんなところから生まれた、ニブチン同士の初恋物語でした(笑)
'06.06.12up


 

 

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