このひとは理解不能だ。 こんなふうに時々、急に不機嫌になったりする。ほとんどの場合、俺には理由が判らないままだ。 それでもその状態を翌日まで引きずることはないのが救いか。 「イルカ先生〜。ねーもう機嫌なおしてくださいよー」 ベッドを占領して、まだ暑いのに布団に包まっている塊に、声をかける。 食事の片づけから入浴まで一言もしゃべらず、俺が風呂から上がってみるとすでにこの状態だった。 どうせ明日には元に戻っているのだろうけれど、今日は一週間ぶりに任務から帰ってやっと心置きなくやれると思っていただけに、このまま明日を待つのは切なくて。 「ねぇ、出てきてよ。俺が悪かったんなら謝りますから」 布団の端を引っ張ると、乱れた黒髪が覗いた。 さらに奥へと潜り込もうとする前に、思い切りよく布団を剥ぎ取ってやる。 こうなれば実力行使だ。 「な……っ!」 何するんですか、そう言おうとしたのだろう彼を遮るように、その身体を抱き寄せた。 もがく力を押さえ込んで、キスをする。 そうしたら、なぜか急にぱたりと抵抗が止んだ。どころか、イルカ先生のほうからしがみついてきた。 びっくりして見ると、俺の鎖骨あたりに顔を埋めた彼は、耳まで真っ赤になっていて。 「……イルカ先生、もしかしてキスして欲しかったの?」 俺の問いかけに、ますます身を縮めてきつく抱きついてくる。耳どころか、首筋まで真っ赤だ。 つまり、キスしたかったのに俺が気づかなかったから怒ってた――というか拗ねてたってわけか。 いやでも、いくら何でも俺だって言ってくれなきゃ判んないことだってあるでしょーよ。 なんてワガママなひとだろう、それくらい言ってくれたらいくらでもしてあげたのに。 そんなふうに思いながらも、俺は顔が緩むのを止められなかった。 だって、火でもついてるんじゃというくらい赤くなった彼が、 「俺ばっかりしたいみたいで……」なんて消え入りそうな声で漏らしたりするから。 「そんなわけないでしょ。ああもう、アンタマジ可愛すぎ」 俺はそう言うと、さっさと彼を押し倒した。 ここまで煽ってくれたんだから、今夜はせいぜい覚悟してもらわなきゃ、ね。 THANKS!
長いこと置きっぱになってたWeb拍手お礼SSSその1。 置きっぱにもなってたが、仕舞いっぱにもなってた(笑) 最初に書いたのだから、とにかく甘く!しました♥ 次はちゃんと放ったらかしにしないようにしよう…。 '05.09.12up
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