みがわり


 

「カカシ先生! アンタまた浮気しましたね!?」

 女と歩いてるの見ましたよ、と。
 怒りも露わに詰め寄ってくるイルカ先生に、「そんなことしてませんよ」と笑って見せる。
「見たって言ってるでしょう! じゃああれはただのオトモダチだとでも言うんですかっ」
「ソーデスヨ〜?」
「カカシ先生っ!!」
 わざと軽い口調ではぐらかせば、睨みつけてくる目にジワリと涙が滲む。
 ああ、泣かないでヨ。ホントにそんなんじゃないんだから。
 アッチがどう思ってるかなんて知ったこっちゃナイけど、俺にとってはドーデモイイ相手なんだからさ。
 俺が愛してるのは、アナタだけ。
 差し伸べた手を拒む素振りで首を振る、つれない俺の恋人。

 アノネ、先生。気づいてた?
 アナタがたびたび見かける、俺の「浮気相手」ってね、共通点があんですヨ。
 ねぇアナタ、俺とソイツらが並んで歩いてんの、見たことないデショ?
 必ずね、俺はソイツの一歩か二歩後ろを歩くようにしてんです。
 なんでだと思う?
 ――横を歩いてたら、だって判っちゃうから。

 揺れる髪の毛の尻尾の主が、アナタじゃないってこと。

 

 アナタが傍にいないとき。
 寂しくてたまらないとき。

 ただ、ぬくもりと。
 アナタを思わせる『何か』が欲しくて。

 俺が声をかける相手はいつも、少し体格の良い、
 黒いひっつめ髪の、

 

 後ろ姿のシルエットがアナタにそっくりな、女。

 

「もう嫌だ、今度こそ別れてやる! アンタなんか大嫌いだ!!」
 抱きしめる腕のなかで、もがくのを止めないイルカ先生が叫ぶ。
 そんなイタイこと、言わないでヨ。こんなにアナタのことだけ愛してるのに。
「……俺のこと、捨てないで……ね?」
 囁いて、震える身体をいっそう強く抱きしめる。
 いくらシルエットが似ていても、やっぱり紛い物は紛い物で。
 背中から抱いてみても、頼りない肩に、柔らかな身体に、なんども失望を感じた。
 ほしいのは、やっぱりアナタのこの身体だけ。
 だから。

「離してください……!」
「ヤダヨ。アナタのこと、愛してますから」

 ウソツキ、そう責めながらも結局本気で俺を振り払えないことを知ってる。
 こうやってずっと離れないでいられたら、後ろ姿だけの身代わりなんてイラナイのにね。

 

 ああ、赤い糸なんてちゃちなものじゃなく。
 アナタと俺とを縛りつける、鎖が欲しい。

 

 

――――――end

 

 



カカシ×イルカリンクトップ企画投稿作品。テーマは「後ろ姿」。
最後の二行と、カカシ先生の「ヤダヨ」が書きたかった話(ええっ)
イルカ先生に、後ろ姿、しかもシルエットだけとはいえ似てる女って…ι
あ、ほら。ベスト着てるとね! 体の線とかあまり出ないしね!!(…苦)
投稿時、『空間命』とかコメントしてました…
管理人様には、申し訳なかったです。いろいろと。
女にもてて浮気性(でももちろん本当は受一筋)な攻が好きです。
てゆーか、そういう攻にハマること多い気が。
'04.11.08up


 

 

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