LOVELY BABY
〜13〜



「もちろんすぐには信じてもらえねェだろうけど、できる限りあいつを傷つけねェようにするから。……ごめんね」
 チビは、俺の答えに満足そうに頷き、しししっと歯を見せて笑った。少女は潤んだ目で、疑うように俺を見ている。
 多分、これ以上どれほど言葉を尽くしても、彼女が手放しに俺を信じることはないだろう。俺だって、友人のコイビト――ま、一応な――が俺みたいのだったら、絶対に反対する。むしろチビの、身体はチビなくせに妙に大物な反応のほうがおかしいのだ。
 少女はやがて、ひとつ溜め息をつき、伝票を俺のほうへ押し遣ってチビを促し立ち上がった。いつの間にかチビの前にあったバケツみてェなパフェの器は空になっている。本当に、いつの間にか。
 俺は苦笑して伝票を受け取り、二人が店を出て行くのを見送った。
「またな、サンジ!」
 チビが馴れ馴れしく俺を呼び捨て、懐こい笑顔で手を振る。少女は軽く会釈だけして、チビを引きずるようにして去っていった。
 今頃になって、注文したホットコーヒーが運ばれてきた。とりあえずそれに口をつけながら、伝票を見る。
 パフェは五千ベリーもする代物で、店で一番でかくて高いものだった。胃袋も大物だなと、俺はちょっと遠い目をしてしまった。

 

 

 明日は試験最終日だと、にゃんこが嬉しそうに言った。どうやら部活が再開するのがよほど嬉しいらしい。どうせ休止中だって道場で竹刀振ってたくせにな。
 一応形だけはマジメにテキストとノートを開いてはいるが、はっきり言ってあんま頭が良さそうにも思えない。きっと一夜漬けで何とか赤点をギリで免れてるタイプだろう。
「そういや今日は帰り、早ェよな。サンジさん仕事休みだっけ?」
 にゃんこがふと首を傾げながら訊いてくる。昼間、友人たちが俺と会ってたことなんて、知りもしねェんだろうな。チビガキのほうはともかく、あの少女はそういうところは抜かりなさそうだし、気付かせるような真似などしそうにない。
 応えず、缶ビールを持って近づくと、自分が訊いていたことも忘れたように目を輝かせた。ったく、すっかり酒飲みになっちまって。
 手を伸ばしてくるのから、ひょいとビールを遠ざける。
「……何だよ!」
「風呂上りのがいいだろ。先に入って来いよ」
 ムッとした表情で俺を見上げたガキが、俺の言葉に納得した様子で頷いた。テキストを放って、いそいそとバスルームへ向かう。
 手ぶらで行きやがったよ、あいつ。タオルは脱衣所に置いてあるけど、パンツまではさすがに用意してねェぞ。全裸で出てくる気か? いや、それはそれで歓迎しますけど。つか、一緒に入っちゃおっかな、なんて。
 そんなことを冗談ぽく思って、なのに下着を手に脱衣所に入ったとたん、マジになってしまった。
 シャワーを浴びてるシルエットがガラス戸越しに見えて、湯気で煙ったその姿が素っ裸を直に見るよりムラっときた。
 昼間のことを思い出すと、ちょっとはマジメにこいつとの関係を見直すべきかなーとか、今更過ぎるけど犯罪なんだよなーとか、色々考えてたんだが。こいつ相手に、この手の理性が利いた例はない。
 とりあえず下着を脱衣籠に入れて、ガラス戸を軽く叩いた。
「ゾーロっ。俺も入ってイイ?」
「えっ、はァ? 何言って、やだよッ」
 よほど驚いたのか、うろたえた声が響いて聞こえる。やだよ、ときたか。生意気な。
 浴室のドアに鍵なんて付いていない。俺は形だけ許可を求め、拒まれたことなど無視してさっさと服を脱ぎ、ガラス戸を開けた。
「ぎゃー!!」
 にゃんこは飛び上がり、湯の張られていないバスタブに逃げ込んだ。今更何がそんなに恥ずかしいのか、その顔は真っ赤だ。
 ホント、いつまで経っても慣れないってか初心いってか。まったく、たまらんね。
 俺は意地悪げににやあと笑い、
「ペットを洗ってやんのも、飼い主の務めだしな?」
「じっ自分でやる! 洗えるっ!」
「遠慮すんなって。隅々までキレーに洗ってやるからよ♪」
 自ら狭いバスタブなんかに入って、却って逃げ道を無くしてしまったガキは、俺にあっさり腕を捕られてなお往生際悪くじたばたと暴れた。
「だ……だめっ」
「何がダメ?」
 覗き込んだガキの表情はやっぱり真っ赤で、何故か半泣きだった。だから、Sの俺にその顔は逆効果だっての。
 しかも、俯いて消え入りそうな声で綴られた言葉は、更に俺を煽るものでしかなくて。

「だって……あんたに触られただけで、俺、変になっちまうから……っ。きょ、今日は勉強しねェと、明日の物理やべェし……なのに……!」

 ――あーもう、どーしてくれようかこのにゃんこ!
 俺はガキの頬を両手で挟んで強引に上向かせ、性質の悪い唇を塞いでやった。サアア、とシャワーから湯が降り注ぐ。手を伸ばしてコックを捻り、それを止める。
 にゃんこはキスだけで呆気なく陥落し、抵抗するどころかむしろしがみつくようにしながら懸命にキスに応えている。何回やっても拙いそれが、却って興奮するってんだから、俺も大概いかれてる。
 あたたかく濡れた身体を手のひらで撫で下ろし、素直に反応しかけたペニスに触れる。くぐもった声を上げ、ガキは腰を引いた。
「っふ…や……っ」
 逃げる尻を抱くようにして引き戻し、握り込んだものにゆるゆると刺激を与えてやると、ガキは甘えた声を漏らし目を潤ませた。
 くちづけを解き、首筋に舌を這わせれば、汗ではなく湯の透明な味がした。
 にゃんこが、しがみついていた俺の肩に爪を立てる。ぺたりと尻をつけてバスタブの底に座り込んでしまった奴は、たったこれだけでもうイきそうに性器を昂ぶらせている。えっちだなァとからかう口調で言ってやったら、ただでさえ赤かった顔がこれ以上ないほど赤く染まった。
 それにくすりと笑みを零し、空いた手を後ろへ這わせる。そこは湯で湿って、慣らされた刺激にひくりと息づいた。ガキは身体の覚えも早くていいね。
「……ぁ…サン、ジ…さ……っ」
「な、ゾロ。……いーこにしてたら、今日は一回で終わってやるよ?」
 期待しているような、怯えているような表情を見せる奴に、そう安心させるように優しげな声音で囁いてやる。
 可愛い俺のにゃんこは、素直に脚を開き、舌を差し出してキスを求めてきた。
 ホント、覚えが早くて。

「――いいこだね」

 

 

 

 

      ――――NEXT

 



やっほう久々のエロだ★(そんなエロくない)
つかこの話、18禁なんですけど。どこがやねん(笑)
急にイチャイチャが書きたくなって、そのシーンを差し込みました。
おかげで後2話とかでは到底終われそうにないです…(遠い目)
この話は、最初ふたとおりのEDを考えてました。
もう一方のEDは、あまりハッピーとはいえない感じでした。
書いてくうちに高校生ゾロたんが可愛くて愛しくて、
どうしてもサンジさんとしあわせにしてあげたくなったので…
そうです、ひとつだけお約束するなら、この話はハッピーエンドです。
が・頑張りますね!(←むしろ自分に言い聞かせている)(苦)
'09.06.22up


 

 

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