男・菊丸英二、決意致しました! 明日、いよいよ手塚に告白しちゃいますっ!!
告 白
今更ながらに決心したのは、やっぱホラ、アレだ。きょーりょくなライバルの登場ってヤツ。 それも、今んとこ俺ってば、かーなーり分が悪い。ソイツはしっかり手塚に気に入られちゃってて、オマケにすんごく積極的だ。育った環境の所為か何か知らにゃいけど、とにかく言うこともやることもストレートで、大胆。 『ソイツ』とは、我が青学期待の一年生ルーキー・越前リョーマだ。 個人的にはスキだよ? 俺、はっきり物言うヤツってスキだし。小っこくて生意気だけど、テニスの腕は確かだ。まぁまだカンタンには負けてやんないけどさ。とにかく、結構ソイツのことは気に入ってると思う。 けど、ダメ。 好きだって自分のキモチ自覚してから、一年とちょっと。ずっとずっと好きだったんだから。 いくらおチビにだって、手塚は渡せない! そんにゃワケで、俺は手塚に告白することを決意したのでありました。 さて、告白すると言っても、どー言ったものか。手塚ってば生徒会長なんかもやってるし、テニスに関してはすんごく鋭いってゆーかそんなカンジなのに、実際はスッ惚けたとこがあるってゆーか……ハッキリ、ニブイんだよね。天然ってゆーの? だって、手塚って……「スキ」って言っても「そうか」って流しちゃいそーじゃん? 絶対イミ判んないよ、アイツは! そりゃもう、間違えよーのないくらいことこまか〜く説明してあげにゃいとねん。 でもだからって、せっかくの告白のコトバが色気もなんもナイんではちょっとあんまりだもんにゃ〜……。 結局具体的なことは決めらんないまま、掃除当番の俺はそんなことを考えながら空になったゴミ箱を持って教室に戻った。考えごとしながらのんびり歩いてたので、掃除はほとんど終わってしまっていた。 机を戻して、バッグを引っ掛けて部室へ急ぐ。と、目の前に見慣れた後姿。俺は嬉しくなってしまった。 手塚、はっけ〜ん★ 走るスピード上げて、手塚に追いつく。 「てーづか♥ 手塚も掃除当番?」 「……菊丸……廊下を走るな」 ポンっと肩を叩いたら、振り向いた手塚に呆れたように言われてしまった。う〜ん、優等生のお言葉だね〜。 「今日は俺は、生徒会の方に出るから、お前は早く部活に行け」 むうう、と唸った俺に、手塚はそう言った。へ? な、何?? 「手塚、今日部活出にゃいのぉ!?」 「……ああ、遅くなるからな……」 にゃ〜んだぁ、ガッカリ。じゃここで会えなかったら、今日一回も手塚見れないとこだったんじゃん! あ、でもこれってラッキーかも。 これで手塚と二人きりになるチャンス、作れる! てか今言わないとせっかくの一大決心がムダになる〜! 「て、手塚。話があるんだけどっ」 「………今か?」 急いでるんだけど、と言うようにちょっと面倒臭そうに手塚が答える。 う。こんな時ばっか表情豊かになるのはヤメてくらはい。センサイな菊丸くんは、ヘコんじゃいマス。 「帰りでいーよ。俺、部室で待ってるからさ。ね?」 もちろん、最初っからそのつもり。こんなトコで手短に話を済ませる気はナイのだ! 当たり前だけど。 「遅くなるぞ? 明日じゃダメなのか?」 「ダメなの! 待ってるから、ちゃんと来てよね! ねっ!」 遠まわしに断られそーになって、俺は思いっきり強い口調で押し切った。手塚が困ってるみたいなのは判ったけど、俺の決意は固いのだ。ここまできてちゅーとハンパなまま明日に持ち越し、にゃんてぜーったいヤダ! 仕方ないな、と溜め息をついて、手塚が頷いてくれる。 「ありがとー手塚! じゃ、あとでねーっ!!」 俺は上機嫌で手を振って、首を傾げながら生徒会室へ向かう手塚を見送った。 さあ。決戦の時は近づいた。 とにかく当たって砕けるのだ!――――――いやいや、砕けちゃダメにゃんだけど。とにかく。 ガンバルぞ―――――――――っ!! そして俺は、ガンバって練習をして、着替えた後大石から部室の鍵を預かって、皆を帰してからガンバって手塚を待って………いや、待つのにガンバることはないか。で、椅子に放ったらかしてあった雑誌をテキトーに読んでたら、ドアが開いた。 外はもうとっくに薄暗くなってしまっていた。 「お疲れ、手塚」 俺は雑誌を元通りに放り出して、よっ、と掛け声をかけながら椅子から飛び跳ねるように立ち上がった。 「すまない、遅くなった」 「イイよん。待つって言ったじゃん」 申し訳なさそーな手塚に、ニッコリ笑ってそう言いながらも、内心では思いっきしキンチョーしてたりして。もー、心臓なんかばっくんばっくん! 笑顔が引きつっちゃったりしてませんよーにっ! 俺はこっそり、こぶしをぎゅっと握り込んだ。 「あ、あのさぁ……マジメな話にゃんだけど。好き、って色々あるよね?」 「? ……そうだな」 手塚、全然俺の言いたいコトが判ってないっポイ。不思議そうなカオで、一応相槌は打ってる、ってカンジだ。でもこんなトコで挫けてらんない。 「トモダチのスキとか、カゾクのスキとか……そんでね、」 俺は恋愛感情のイミで手塚のことがスキだ! ――――っと、言おうと思って顔を上げた、ら。 ……………は? れ?? にゃ、にゃんで……手塚、笑ってんの?? 声を殺して、肩を震わせて。あ、笑ってる顔見たい。こっち向いて。 ――――――じゃなくて。 「ちょっと手塚、ヒドイじゃん! 俺マジに話してんのにっ」 「す、……すまん……お前が、越前と似たようなことを言うからっ………」 傷ついたっ、と怒って見せた俺に、手塚はでもまだ笑いながらそう言った。――――――――――――――え? 「何、それ。おチビ、手塚にどんな話したの?」 ってゆーか、いつの間にそんな、話とかしてたワケ? にゃ、にゃんかすっごい悔しいんですけど!! 手塚が何とか笑いを止めて、俺に説明してくれたトコロによると。 昨日練習のあと、おチビに門のとこで待ち伏せされて、話があるって言われて一緒にいた大石から引き離されて、そんで。 ”like”と”love”の違いについて語られたんだそうな。 ――――――つーか、それって俺と発想ほとんど一緒じゃん! 最後まで言わなくてヨカッタ! 順番的に、俺のがパクリみたいだ。 しかし、おチビめ〜〜、油断もスキもにゃいっ! その後の展開が知りたくて、俺は手塚に詰め寄った。 「そんで、そんで? 手塚はにゃんて答えたの?」 そしたら、手塚は困惑したカオになって。 「……『さすがに発音が綺麗だな』と褒めたら、急に怒り出してそのまま帰って行った」 俺の目は、点になった。 手塚は、よく判らんヤツだ、にゃんて言って首を傾げてる。 ………よく判らんのはアナタです………。 俺はメチャクチャ力が抜けて、ハーッ、と大袈裟に溜め息をついた。 おチビ、ちょっと気の毒……かも。 うーんしかし。残念無念、また来週〜、にゃんてコト言ってるバアイじゃナイぞ、コレは。来週またチャレンジされても困るし。むしろ「一昨日おいで」ってカンジ? いやいや、そうでなく。 判ってたつもりだったケド、手塚の天然ボケっぷりは予想以上にスバラシイ。やっぱり、まわりくどいセリフはダメだ。こーゆー鈍いヤツには直球勝負でイかねば! おチビには悪いけど、教訓にさせてもらうよん。 「手塚、俺と付き合ってくんにゃい?」 「どこへ?」 間髪入れずの返事は、じゅーぶん予測の範囲内だ。こんくらいじゃメゲにゃいもんねっ! 俺は、人懐こい笑みを浮かべたまま、手塚に近づいた。もうちょっとで触れるくらいまで近づいて上目遣いで見上げれば、手塚の戸惑ったカオが近くて。カワイくて。 うう〜〜、俺ってばホントに手塚のコト好きにゃんだ〜、と妙に感心してしまったりして。 「んーと、映画。遊園地でもいいけど」 ちょっと考えるフリをしてから、定番のデートコースを挙げる。 手塚は困ったカオして――――たぶんパッと見じゃ判んない変化だけど――――これまた予想通りのことを言った。 「それなら俺とより、不二や大石や、桃城と行った方が………」 「ダメ。俺がデートしたいのは、手塚だもん」 「………デートって………」 楽しいんじゃないか、とでも続けようとしたんだろう手塚の言葉を遮って、キッパリ言うと、手塚はビックリしたように目を瞠った。 「菊丸。デートというのは、普通恋人同士で出かけることを言わないか?」 「うん、だから。手塚、俺の恋人になってよ」 俺が言葉の使い方を間違えたみたいな、失礼なことを言う手塚に、俺はしっかり頷いて一気に言った。 ビックリしてたのが、また困ったカオになって、最後には手塚は俺から視線を外してしまった。 「……突然、言われても……俺は……そういうの、判らないんだが………」 ふざけるなっと怒られるか、ゴメンナサイされるか……と身構えた俺は、らしくなくおどおどと答える手塚に、ビックリした。 ねぇ、それって……ソッコー「ゴメンナサイ」じゃないってコトは……俺、もしかしてちょっとくらい期待しちゃってもイイ、の? 手塚は落ち着かないみたいに、目線をあちこちに泳がせてる。少なくとも、嫌がってるふうには見えない、と思う。 「す、少し時間をくれないか」 しばらくして、よーやく俺の言葉をしっかり理解できたのか、手塚は真っ赤になって早口でそれだけ言った。 俺は嬉しくなってしまった。 「うんっ! 待ってる!」 俺は手塚に抱きついた。うろたえてる手塚の肩に頭を乗っけて、耳元にそっと囁く。 「………好きだよ」 手塚は、俺の言葉に、小さく頷いてくれた。
もしかすると、俺の勝負はこっからが本番なのかもしれない。 手塚は、絶対俺のこと、好きになる……!
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