その関係予定を訊かれたときにそのことを言ったら食事に誘われたので、待ち合わせることにした。めったに受けねェけど、同伴てやつ?(ちょっと違うか) 暇だったので早めの時間からふらふらしてると、見覚えがありすぎるほどある制服の高校生集団を見かけた。 ヘェ、あいつ、この辺の学校に通ってたのか。なんて、今更そんなことに気付くのもどうかと思うが。 可愛いセーラー服の女の子たち、さすがにまだ食指の動かない男子たち。下校にゃずいぶん早いと思ったら、どうやらテスト中かなんかだ。そういやあのガキも、こないだから急に真面目に勉強とか始めてた。 何となくいくつもの塊を作るガキどもを眺めていたら、その中のグループのひとつに、見慣れた緑頭を発見した。黒い頭のチビと、鮮やかなオレンジの髪の美少女と三人、連れ立って歩いている。 俺の前では見せない、寛いだ表情で笑っている奴は、その中ではずいぶんと落ち着いて、大人びて見えた。初めて見る、奴の一面。 複雑な気持ちになりながらも、遠目から見送ろうとしたとき、奴がふっとこちらへ頭を巡らした。 まさか気付くまいと思ったのに、奴の目はすぐに俺を捕らえて。 ぱぁっと、その表情が明るくなったのが、目に見えて判った。 「ゾロ?」 美少女の呼びかけも無視して、俺のほうへ駆け寄ってくる。にゃんこのくせに、尻尾振ってる犬みたいだ。もー何こいつ、可愛すぎ。昨日会ったばっかじゃん。 息を弾ませたガキは、俺を見上げながら首を傾げた。 「サンジさん。何でこんなとこいんの?」 「ん? 客と待ち合わせ〜」 軽く答えたら、判りやすく表情が曇った。が、すぐに気を取り直して、今度は違うことを訊いてきた。 「今日、何時に終わるんだ?」 「予定がずれ込まなかったら、0時前かな。待ってられる? 寝ててもいいけど」 「う……。お、起きてるっ。ベンキョ、しなきゃなんねェし……」 「ふうん?」 いつも俺が帰ったときソファで転寝しているのを揶揄するように笑うと、拗ねた様子で頬を膨らませる。やっぱガキだ、ガキ。 と、美少女とチビがそろって、遅まきながらガキを追ってこちらへ向かってきた。 「ゾロ。知り合い?」 「ゾロの友達かっ!? 俺ルフィ! よろしくなっ」 「あんたは黙ってなさい!」 美少女はやたらと懐こいチビを張り倒し、少々不躾な、値踏みするような目で俺を見遣った。 まァ――怪しいわな。昼日中、学生には到底見えねェようないい年した男が、街をふらふらしてたら。 俺はとりあえず、極上の営業スマイルを彼女に向けた。そこらの女の子と違って、こんなんで誤魔化されるタイプとは思えなかったけど。 案の定、彼女は冷めた目つきでガキを振り返った。 「で。だれなの?」 「俺の飼い主」 空気が読めないのか、ガキはあっさりとそう答えた。――一般向けの答えをしろよ。彼女、すげェ目で睨んでんじゃねェか。 ところがチビのほうは、何やらツボに入ったらしく爆笑して、 「おもしれェ! ゾロ、おめェ犬だったんか!」 「いや、……猫?」 俺に訊くな。何だ。こんな往来で「にゃんこちゃん」とか呼んでほしいのか。 どうも、チビはガキとは似た者同士というか、ルイトモらしい。ますます美少女の存在が浮く。どーゆー関係なんだこいつら。
結局、美少女の俺への印象最悪のまま、ふたりは彼女に引きずられるようにして行ってしまった。 その後、お勤めを滞りなく済ませて帰ると、ガキは予想を裏切らず、ソファで教科書を開いたまま寝こけていた。 とりあえず口と鼻を塞ぐという乱暴なやり方で起こし、昼間のことを訊いた。 クラスメイトだと、面白くも何ともない答えが返る。何か気が合った、らしい。何だそりゃ。 ベタベタくっついてたチビと、俺を胡散臭げに見てきた美少女。どうも気になるというか何というか、……まァいいけどね。 「つーか、お前。他人様の前で『飼い主』とか言うなよ」 「……俺のこと飼うってったの、サンジさんじゃん」 そうなんだけどね。世間の常識っていうか人の目っていうかね。 ガキはむうっと唇を突き出して、俺を上目遣いに睨む。可愛くない。 じゃあ他に何て言うんだよ、なんて心底不思議そうに訊いてくるから、俺は一般的に見た自分たちの関係を教えてやった。多分、飼い主とにゃんこ、よりは自然だ。 「恋人、って言っときゃいいだろ」
驚いた。 ホントに、マジでメチャメチャ驚いた。 こいつがこんな泣き方するの、初めて見た。
――――END
ホモップル、が自然かどうかはともかく(笑) 男娼×高校生、小話でした。 何かフツーにサンジさんちにゾロたんがいたりしますが、 連載の終わり近い辺りの話なんです。 ナミさんとルフィは、最初から出す予定でしたが。 この中にウソップを入れるかどうかを、最後まで悩んでました。 そのうち、別の役割で登場させたいと思います。 ロビンちゃんの役どころは決まってるんですけど…(苦笑) '09.01.27up
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