フリータイム俺は城(キッチン)を出て、タバコをくわえた。火をつけてゆっくりと煙を吸い込みながら、ぐるりと視線を巡らす。 後部甲板に、ダンベルを交互に持ち上げているトレーニング中のダーリンを発見。 船尾に向かっているから、こっちにちょうど背中を向けている格好だ。 きれいに筋肉のついた、クソきれいな背中。あちこち傷だらけのアイツの、ただひとつの傷もないその場所。 シャツ越しにも判る、隆起する背筋に、思わず見惚れる。 メチャメチャ触りてェ。 トレーニングの邪魔をすると後々までうるせェから、いつもはこーやって眺めてるだけなんだけど。 今日に限って、俺に気づいているくせに決してこっちを向こうとしないアイツの背中が、妙な引力でもって俺を惹きつける。 俺は、足音も消さずに無造作にアイツに近づいた。 ピクリとも反応しやがらねェ、クソ可愛くねェ奴。 俺は黙ったまますぐ傍まで近づき、吸いかけのタバコを指で弾いて海へ放ると、徐にその背中に飛びついた。 そのままだと、ほぼ同じ身長の俺たちだから、足がついてしまう。ので、軽く膝を曲げて全体重をかけてやった。 一瞬だけ、足元がよろけたけれど(勢いつけて乗っかったからな)、愛しのダーリンは振り向きもしない。どころか、小さくため息をついたきり、俺を背負ったままトレーニングを再開した。 「………………」 冷てェ。 判っちゃいたが、コイツ、メチャメチャクソ冷てェ奴だ。つれないにもほどがある。 ここまでしてんだから、怒鳴るんでもいーから何か反応しろよ。俺ァ錘代わりか!? 腹が立ったので、お仕置きを決行。 シャラシャラと目の前で揺れているピアスを、耳朶ごと口に含んだ。 「どあっっ!?」 色気ねェ叫びとともに飛び上がったダーリンが、ダンベルを取り落とし、ついでにおぶさってた俺を振り払った。 思いっきり打ったケツは痛ェが、とりあえず大成功。 「ひっでーな、これがてめェの彼氏にする仕打ちかよ」 「おんぶおばけが何ぬかしてやがる。つか、そもそも彼氏じゃねェ」 わざとぼやいてみせれば、こっちを見もしねェでダンベル拾いながら、キッツイお言葉。でも、俺はそれには反論しなかった。 何でも無さそうに冷てェこと言ってやがるダーリンの耳が赤くなってるのが判ったからだ。 きっと、顔はもっと赤い。 それを気づかれないように、俺から顔を背けたのだろう。可愛いったらないね。 とっても感じやすいコイツは、俺的にはクソご奉仕しがいのある恋人だが、本人的にはかなりコンプレックスらしい。ヤってるときも、すっげェ辛そうにして反応を抑えてやがるのだ。 ま、それを俺様のスペシャルテクでメロメロのドロドロに溶かしてやるのが楽しいわけだが。 俺は、くく、と笑いを漏らした。 「お前、ンな耳弱ェのに、よくピアスなんざ三つも開けたな」 ダーリン、無言。 「なァ、どやって開けたンだよ? 自分で? それとも誰かにシてもらった?」 意地悪く顔を覗き込みながら問いかける俺を、肘で押しやってくる。 無言。 「だとしたら妬けンな。てめェの穴にツッこみやがったソイツによ」 わざと卑猥な言い方をしてやれば、ギリ、と奥歯を噛み締める微かな音。耳まで赤かったのが、項まで広がる。 それでも、無言。 無視じゃなく、言葉が返せないのだ。コイツ、ボキャブラリー超少ねェからな。どう返していいか判んないんだろう。 俺は、背後からぺたりと張り付いて、まだ真っ赤なままの耳元に、そっと唇を寄せた。 「ゾーロ」 ふっ、と息を吹きかけつつ名を呼ぶ。 ビクン、と大袈裟に肩が跳ねた。 「なァ、……構って?」 腕を前にまわして、抱き締める。 厚い胸板越しにも手のひらに伝わる、早まった鼓動。すり、と撫でまわしたら、小さな突起が指に引っかかった。 鋭く息を呑む音。 「コック……!」 「何よ」 「……ッ」 焦った声での呼びかけは、俺の手の動きに上がりかけた声を抑えようとしてか、一度きりで途切れる。 俺はゆるりと口角を上げた。 冷たくてつれない恋人は、カラダばかりがこんなにも素直。 声を殺すために罵る言葉も封じ込められ、身を硬くしているから思うように暴れられない。 一旦近づいちまえば、こんなにも容易い奴だと。他の誰にも気づかれねェよう、俺がしっかり見張っててやらねェと。 コイツは、俺だけのモン、だからな。
さて。 フリータイム終了まであと数十分。 何発くれェイけっかな……?
――――END
実はだいぶ前に下書きして放置していたものです。 初サンゾロSS。 後部甲板とか言ってるので、メリー号の頃の話ですね。 ふたり以外出てこない話…まあ大抵そんなんですが。私の書くのは。 しっかし、独占欲の強い攻、好きだなァ私(爆) そしてニブいくせにカラダの感度は良好な受♥(死) 虐められるかわいそうなゾロたんも好きなんですが、 てゆーか意地悪サンジさんが大好きです(ぶっちゃけた!) '07.12.03up
|
※ウィンドウを閉じてお戻りください※