COLORS彼のバースデーでもあるその日に、ちょっとベタかなと思いつつマフラーを編んでプレゼントしようと、あたしは張り切っていた。 びっくりさせたかったから、そのことはナイショにして、毛糸の色を決めるために彼に訊いた。 「ねェねェ、リョーマ様! リョーマ様の好きな色って、何色?」 そうしたら、彼――リョーマ様はあたしのほうをチラッとだけ見て、またすぐに手元のテニスラケットのガットを点検し始めた。 テニスのこととなると他が見えなくなるひとだから、あたしの質問はそのまま無視されちゃうんだろうな、と思った。 まぁいいわ。今は真剣な表情のリョーマ様を堪能して、また後で訊きなおそうっと。 ――と、思ったら。 「……薄いピンク」 ぽつん、とリョーマ様が言った。 返事をくれたのは嬉しいけど、……ピンク? ちょっと、ううんメチャメチャ意外な色ね。 メモに、”ピンク”と書いた。そうしたら、あ、やっぱり、とリョーマ様。 「明るいオレンジ、かな」 これまた意外。暖色系が好きなのかな? いつもブルー系の服とか着てるから、当然ブルー系だと思ったのに。 あたしはメモの”ピンク”を二重線で消して、”オレンジ”と書いた。そしたらまた、あーでも、とリョーマ様。 リョーマ様ったら、こんな優柔不断なタイプだったっけ? そして、リョーマ様が次に挙げたのは、白、だった。 「白?」 「うん。……黒よりは、シンプルに白、かな」 あたしはメモの”オレンジ”にも二重線を引き、”白”と書いて二重丸で囲った。よし、じゃあさっそく白い毛糸を……。 ふっ、と。 ラケットに落とされたままだったリョーマ様の視線が、あたしのほうを向いた。 まっすぐな目に見つめられて、思わずぽうっとしてたら。 「……ついでに。デザインは、セクシー系より可愛い系が好み」 セクシー系? 可愛い系?? デザイン、と言われて一瞬、マフラー計画(?)のことがバレたのかと思ったけど、マフラーにセクシー系とかないわよね。 「……何の話?」 訊いたあたしに、リョーマ様はニッ、と笑って手を伸ばしてきた。 首の後ろを押さえられて、引き寄せられて。 キスされるのかと目を瞑ったら、リョーマ様はあたしの耳に唇を寄せてからかうような声で囁いた。 「勝負下着の色の話、じゃないの?」
「リョーマ様のえっち!!!」
あのあと、あんまり腹が立ったから、あたしは真っ赤な毛糸で編んだマフラーをプレゼントしてやった。 けど、これが意外にもすっごく似合って。 リョーマ様も、へえいいじゃん、なんて言ってくれて。 結局、すごーく甘々なイブ&バースデーを過ごせて、しあわせだったっけ。 ただし、あたしが桜乃にも色違いの――桜乃のはパステルピンクの毛糸だ――マフラーを編んであげた、と言ったらリョーマ様はなんだかムッとしちゃって。 それじゃ俺と竜崎がペアみたいじゃん、と言われて、あたしは焦った。 名前も教えてもらってないけど、桜乃の好きなひと、に誤解されてるんじゃないかって。 でも桜乃は笑って、そういうの気にするひとじゃないから大丈夫、って言ってくれた。 そして、でもリョーマくんも嫌だろうから学校で使うのはやめるね、って言って、あたしとふたりで出かけるときだけ着けてくれるようになった。 ホンット、何ていい子なのかしら、桜乃ったら! リョーマ様ったら、どうして桜乃のこと嫌がるのかな。こんなに可愛くて、いい子なのに。 そこまで思い出して、あたしはちいさく笑って。 すぐにまた、真剣な目を手元に落とした。 あたしの手元には、真っ白い、デザイン違いの下着が二種。 まさか、あんな冗談を参考にしてこんなものを選ぶ日が来るなんて……。 「リョーマ、どっちのが好みかなァ?」 もう30分以上も下着とにらめっこしてるあたしを、店員さんと桜乃が、呆れたように見ていた。
おわり
久々のリョ朋です! 初夜以前のお話。つか、初夜ネタを書きかけてどこかに放置してる…。 最初、甘々リョ朋を考えて、詰まって、次に桜→朋を考えたのですが、 桜乃がブラックモード全開な上、シリアスになってしまったため、 &王子が欠片も登場しなくなってしまったため、やめました…orz ちなみに、王子はからかい口調でしたが至って大マジです。 好きな色、は全部朋ちゃんに似合いそうな色、を挙げてたんです。 明るいオレンジは、明るいけど淡い色で。 あと、王子が桜乃を嫌がるのはもちろん、恋敵だからですよ!(笑) あーでも、やっぱリョ朋はイイ。大好きです…!! '08.02.11up
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