閉じた世界にふたりきり。
 他のすべてを何もかも排除して、ずっとこのままいられたら。



 閉じた世界



「……ゾロ? 飯だ。起きてっか?」
 声をかけると、しばらくして身動ぐ音が微かに聞こえた。俺はトレイを片手に室内に入り、すぐにドアをしっかりと閉めた。
 ゆっくりと近づくにつれ、薄暗い中でも光と湛えているように見える双眸が、じっとこちらに向けられているのが判った。
 まるで野生の獣を飼っているみたいだ。思ったら、少し笑えた。
 すぐ傍で立ち止まり、膝をつく。
「腹ァ、減ったろ」
 この部屋に手頃なテーブルの類はない。床に直接トレイを置き、皿とスプーンを取ると、ゾロはこくりと頷き、俺の手の動きを目で追った。
 リゾットを掬ったスプーンを差し出せば、素直に口を開く。ぱくりとくわえ込み、もぐもぐと咀嚼する。ごくん、と喉が上下するのを確かめ、もうひと掬い。
 ゾロは従順だ。
 当然だ、だって俺は、こいつの。
 皿が空になると、ゾロはご馳走さん、と小さく呟き、欠伸をした。さっきまで寝てたくせに、呆れた奴だ。
「寝んなよ、……お仕事の時間だぜ」
 俺はゾロの頭を掴んで、引き寄せた。ジャラ…と、ゾロの首にはめられた首輪を繋ぐ鎖が、重たげな音を立てた。
 導いた先は、俺の下肢の中心。
 ゾロは一瞬、物言いたげなまなざしを俺に向けたが、すぐに目を伏せ、俺のズボンの前を開けようとする。器用に歯でくわえてジッパーを下ろし、鼻先で下着を掻き分けて俺自身を引き出す。
 たった三日で、ずいぶんと慣れたものだ。
 後ろ手にまとめたゾロの手に、わずかに力が込められる。促すように、左耳を飾るピアスを指先で弄ってやった。
 ゾロはもう一度俺を上目遣いに見上げ、そしておおきく口を開いた。
「いい子だ。上手にできたら、ココに挿れてやるよ」
 言い様、コードを引く。ゾロがくぐもった声を上げた。
 ズルリ、とゾロの中に納まっていたモノが抜ける。とうに動きを止めている、ちいさなローター。もうずっと、用を足すとき以外はこれをゾロの中に入れたままにしていた。
 すっかりやわらかくなっているそこに、ローターの代わりに指を二本、突っ込む。

「っうぅ……!」

 俺のものをくわえながら、ゾロが呻く。
「歯ァ立てたら、このままな。それかまた、ローター動かしたまんま放置プレイがいいか?」
「んうーっ!」
 涙を滲ませ、頭を振る。それでもゾロは、くわえ込んだものを吐き出したりはしなかった。ご褒美だと笑い、指を増やす。
 ゾロの口淫はヘタクソだったが、しばらくあちこち弄りながらしゃぶらせているうち、さすがに限界が来た。
「っ、飲め。ぜんぶ。吐いたらやり直しだ」
 そう命じて、ゾロの頭を押さえ込みその喉奥に射精した。ゾロは苦しげに涙を浮かべたが、注ぎ込まれたものを大人しく飲み下した。
「よしよし、ちゃんといい子にできたな。……ご褒美やるよ」
 ゾロの口内から抜き取った俺のものは、まだ硬度を保ったまま。
 一旦ゾロの中から指を引き抜き、その下肢を抱え上げる。時間をかけて解した秘孔に、鎮まらない熱塊を押し付ける。
「……あ……」
「お待たせ」
 俺は笑って、おののく蕾を強引に押し開かせた。わずかに感じる抵抗を押し切ると、仰け反ったゾロの喉から掠れた悲鳴が漏れた。
「ハハ、あんだけ慣らしたのにキっツイなァ。処女相手だからって、結構気遣ったのにな?」
 切れちゃった。笑い混じりに言って、ソコから流れ伝う血を拭った指を、ゾロの頬に擦りつけた。紅い線が一筋、ゾロの肌を飾る。
 たまらなかった。

「ぅああ!!」

 ぐっ、と腰を動かすと、ゾロが鳴いた。辛そうな、それでいてどこか甘い響きを伴ったその声に、俺は煽られ、箍を失う。
 後はもう、思うままにゾロを揺さぶった。
 終わりたくなくて、何度も繰り返し求めた。ゾロが意識を手放した後も、何度も何度も犯した。
 とうとうすべてを手に入れたと、そう思ったのに、何ひとつ満たされはしなかった。

 

 

 傷ついたゾロのソコを手当てし、汚れをきれいに清拭して、俺はぼんやりと膝を抱えた。
 予感があった。
 それを否定したくて、頭を横に振った。無駄だと知っていたけれど。

「……サンジ」

 掠れた声に呼ばれ、ビクリと肩が跳ねる。
 三日間、一度も呼ばれることのなかった名前。

「もう、無理だ」

 

 ――――――――ああ。
 それは、終焉を告げる神の声。
 タイムリミットがきたのだ。
 俺は、両手で顔を覆った。嗚咽を堪えられない。
 判ってる。最初から、無理だったのだ。それでも。
 あんたをどこにもやりたくなかった。俺を置いていこうとするあんたを、どんな手を使っても引き止めたかった。
 これまで俺の自由にさせてくれたのは、あんたなりの情けってやつか?

 あァ、もう行くなたァ言わねェよ。
 その代わり、俺があんたを追っていく。だって諦められない。こんなふうに、許されることを知ってしまったら。
 ゾロ。
 ゾロ。
 ゾロ。
 俺ン中、あんたでいっぱいだ。
 もうずっと――何年も前から、ずぅっと。

 俺は涙を拭い、もぞもぞとゾロの元へ這いずって行った。
 拘束を外し、赤く傷になってしまった手首に、唇を寄せる。
 ゾロは黙って、俺のすることをじっと見ている。まだ熱を帯び、潤んだ瞳で。

 

 否応もなく、世界は開かれた。
 けれど、あんたが俺を許す限り、俺はあんたを諦めたりしない。
 高校卒業とともに上京するゾロ。
 俺だって一年後には卒業だ。たったの一年。そうしたら、きっと。
 あんたを追うよ。

 


「……待ってて。『兄さん』」

 

 初めて交わすくちづけに、俺の最愛の兄は目を閉じて応えてくれた。

 

 

 

 

      ――――END

 



弟×兄でした〜。
血の繋がりがあるかどうかは、読まれた方のご想像にお任せ。
ちなみに両親は海外赴任中。結構裕福だと思われます。
おうちの中の、使われてないお部屋に監禁・三日。
「俺は、こいつの」大切な弟。です(笑)
オチでやっと関係が判るようにしたかったので…。
しかし、どうしてこう、あたしのエロってエロくないんだろう。
内容的に18禁にしましたが、実際15禁以下じゃないでしょうか。
…でも一応18禁なので、よろしくです…(何を?)
'08.04.28up


 

 

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