CALL ME 〜2〜



「ゾロ……」

 甘く、名を呼んで。ゆっくりと腰を蠢かす。
 サンジの下、あられもない姿で貫かれているゾロは、きつく目を瞑って声を殺している。顔は真っ赤で、苦しそうだ。
 だが、彼が感じているのが苦痛でないことを、サンジは知っている。
 上体を斜めに走る大傷に、指を這わせて。ふる、と震える瞼に唇を落とす。目尻に滲んだ生理的な涙を、舌で拭ってやる。

「なァ。たった三文字だろ? 簡単じゃねェか」

 ねだる声音で言うサンジに、ぎりっ、と噛み締められた歯が応える。
 強情っぱりめ。
 サンジは内心舌打ちし、不意打ちのように腰を深く沈めた。数度、そのまま突き上げる。

「ぐっ……、あ、あッ」

 唇が解け、ゾロが小さく喘いだ。常よりも高めのその声が、サンジを煽る。
 衝動に任せてしまいたいのを、寸でのところで抑えた。

「ゾロ、ホラ。名前、呼んでくれよ」
「……ッふ、コックっ……もっ、」
「じゃ、ねェだろ。サ・ン・ジ。……呼ばねェと、このままだぜ?」

 昂ぶりきったものを戒める手に、わずかに力が込められる。ゾロは鳴き、かぶりを振った。
 たった三文字。
 その名を呼ぶだけ、それだけなのに。
 屈服させられるのが我慢ならないのだろう、ゾロはサンジの言葉に頑なにうなずこうとしない。
 それも、もう限界だろうとサンジは思っていた。
 挿入までも、散々焦らした。サンジのほうはすでに一度達しているが、ゾロには今日はまだ一度も許していない。
 とっとと陥落しちまえば、好きに出させてやるのに。
 サンジ自身も、本音は辛い。時には虐めてやりたいとも思うが、基本、相手が嫌と言うほど尽くしてやりたい性質なのだ。
 促すように、ゾロの弱いところを擦りあげる。ぷくりと尖った胸の飾りを指と舌とで可愛がる。
 解けてしまった唇は、もはや声を抑えることができない。ゾロはサンジの官能を揺さぶるような声を上げ、もどかしげに身を捩った。
 悶えるゾロを目を細めて見下ろすサンジが、もう一度促した。

「……ゾロ、名前」
「―――――ッ」

 薄く開かれた瞳は潤み、ゆらゆらと揺れている。
 震える唇が、とうとう意図を持って開かれた。

 

「…………ン、ジ」
「聞こえねェ」
「サン……ジっ」
「もっかい」

 縋るような呼び声を何度でも聞きたくて、わざと意地悪く聞こえないふりをする。
 濡れた目が、それでも強い光を帯びてサンジを睨んだ。
 一瞬ぎゅっときつく引き結ばれた唇が、再び開かれる。
 そして。


「――――イかせろッ、クソコック……!」


 潤んだ瞳を吊り上げて、快楽に上ずった声で怒鳴りつけられて。
 サンジは一瞬、ポカンとゾロを見つめた。
 その唇に、微苦笑が浮かぶ。

 

 

「……………仰せのままに。Mon escrimeur bien-aimé」

 

 

 戒めていた指を緩め、絶頂に導くべく上下に扱く。
 上がった悲鳴は、はっきりと嬌声で。
 床に爪を立てていた腕がようやく持ち上がり、サンジの首に絡みついた。
 常からは想像もつかないほど、頼りない力で。それでも必死に、しがみついてくる。
 自分とさほど変わらない身長の、自分よりも体格のいい男なのに。
 愛しくてならない。


 最後の瞬間。
 声にならない声を上げて背を撓らせ達したゾロの唇が、三文字を形作っていたことに、サンジは笑み、追うように自らも欲を解放した。

 

 

 

”あいしている”と言われるよりも、熱烈な告白を受けた気が、した。

 

 

 

 

      ――――END

 



これもかなり前に下書きしてあったな…。
COMICのほうの、同タイトルの漫画の続編?
つか、サンジさん別人ですが。(死)
サンジさんの最後の科白は、フランス語です。
「escrimeur」は「剣士」で翻訳したんですけど。
直訳すると、「柵を作る人」になってしまうのは何故だ(笑)
意味は、「俺の愛しい剣士殿」…気障っっ!!///
姫君でも良かったんですがーサンジさんプリンスだし。
よけい気障っちくなるのでやめてみたです(笑)
'08.01.07up


 

 

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