朝だけの恋人

 

 目を覚ました時、人肌の温もりに包まれていた。

 自分を抱え込んだまま眠っている男。その規則正しい寝息が、イルカの頭頂部のほつれた髪を、微かに揺らす。

 

 ああ、何て優しい朝。

 

 目覚めたばかりだったけれど、イルカはもう一度目を閉じた。
 身体はだるいし、重い。昨夜の激し過ぎる情交の跡もまだ色濃い。
 だが別に眠ろうとしたのではない。少しの間、この幸せを噛み締めていたかったのだ。

 

 昼は他人。
 夜は獣。

 こんな朝のひとときだけ、男はイルカの”恋人”になる。

 愛されていないとは思わない。片手の指にも足りないけれど、言葉を貰ったことだってちゃんとある。

 けれど昼の男は”上忍”で、自分は”中忍”で。
 夜は訪ねて来るなり、ろくな会話も持たないまま、イルカを組み敷く。

 女ではあるまいに、甘い睦言を期待しているわけではないのだけれど。

 

 ねぇ、あなた。
 教えてはいなかったのだから、知らなくて当然ですけど。
 今日は、俺の誕生日なんですよ?

 だから、ねぇ。

 

 お願いだから、もう少しだけ目覚めないでいて。
 祝う代わりに、貴方の温もりを俺にくださいね。

 

 パジャマの前を大きく肌蹴た男の、裸の胸に顔を埋めるように擦り寄り、その背にそっと腕をまわす。
 と、ん…と小さく呻いた彼に、ぎゅうと強く抱き締められた。

 知らず、笑みが零れる。

 

 昼は他人。
 夜は獣。
 でも朝には恋人の、この男を。

 

 

 馬鹿みたいに、愛おしいと思った。

 

 


イルカ先生お誕生日おめでとう話その2。
てゆーか…ポエム?(恥)
珍しく、カカ←イルっぽいですね。
イルカ先生、をとめ…?
今更なんですけど、
うちの二人は何故こんなに偽者くさいのか…(涙)
'03.05.26up


 

 

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