「65点。」



「15ォオオ!?」

 思わず叫んだ俺に、ガキはきょとんと首を傾げた。
 そう、ガキだ。初めて見たときから、そんなこたァ判ってた。身長だって、たぶん160そこそこしかねェチビだし、身体もまだひょろっこいし、疑いようもないくらいガキだ。
 だが。

 スペアキーを渡して三日、早速あさってな場所で迷っていたのを回収し、マンションへ帰ったところだった。
 迷ってないと言い張るガキに――隣の駅の近くをうろついておいてよく言えるものだ――呆れつつ、茶を淹れてやろうとして。
 学校から一旦アパートで着替えて来ていたガキの、ジーンズの尻ポケットから手帳が落ちたのが見えた。拾い上げて見ると、端が折れ曲がった学生証だった。
「お前、こんなの持ち歩いてんの」
 いっそ感心しながらそれを翳して見せれば、ガキは当たり前のように、校則に書いてあるぞ、と答えた。
 いやでも実際、制服脱いじまったら要らねェだろ。俺もブレザーの胸ポケットに仕舞いっぱだったし。要るったら、せいぜい、学割使うときくらいで。
 こんな頭してるくせに、意外と真面目ちゃんだったんだなァと思って笑い――この色が地毛だってェのは、すでによく知ってるんだけどよ――、手帳をめくってみる。カバーのかかった表紙、それを開く、と。
 小さな顔写真の隣に記された文字。

『一年 ロロノア・ゾロ』

「……一年?」
 呟いて、頭の中で計算する。
 高校一年っていったら、
「え、お前16?」
「ん。今度11月でな」
 そこを自分の縄張りと定めたらしい、ガキはラブソファに座ってすっかり寛いでいた。俺の独り言のような問いに答え、クッションを抱えてころんと横になる。
 へえ、と聞き流しかけて。
 次の瞬間、俺は大声で叫んでしまっていた。

 

 

 いや、16も15も大して変わりゃしねェ。今は6月だから、あと半年足らずで16になるっつってるんだしな。
 けど――判ってたようで、判ってなかった。つか、たぶんヤる前はちゃんと判ってたんだ。でもこいつを抱いた瞬間から、そういう事実から目を背けてしまっていたんだろう。
「……にしたって……ひとまわりも違うじゃねェか……」
 一人掛けのソファに落ち着いた俺は、知らず、ぼやきに近い呟きと溜め息を同時に零した。
 それを、ガキが聞きとがめた。
「サンジさんは? 何歳なんだよ」
「……27」
 ひとまわり、の意味も知らなかったらしいガキは、ふうん、と気のない返事を返しただけだった。
 こいつからしたら、何てことのない数字なのかもしれない。
 12歳の差。
 だが俺にしたら、それはでかすぎた。犯罪だとか、それもあるが――そればかりではなく。
 15〜15か〜と、身体を捻ってソファの肘掛に凭れ、ガキに背を向けた状態で手帳を手にしたままぶつぶつ繰り返していると、ごろごろしていたガキが、むっとした顔で起き上がった。
「15だったら、駄目なのかよ」
「……あ?」
「15歳の俺だと駄目なのか。飼ってくんねェの?」
 怒ったような声音に振り返れば、ガキはその声とは裏腹にひどく不安そうな、心細そうな表情で俺を見上げていた。
 飼い始めたばかりの可愛いにゃんこのそんな顔を見たら、どーにもたまらなくなって。もうひと押しして泣かしてやろうかなんて気持ちにもなったけれど。
 それと同じくらい、いやそれ以上に、下半身のほうがどーにもたまらなくなってしまった。
 今日もちゃんと、お客サマ方のお相手を務めてきたってのに。
 俺が元気すぎんのか、それとも。

「――おいで、ゾロ」

 手招くと、ソファからずり落ちるような格好で床に下り、獣のように這いずって俺の座るソファの足元へ来た。
 俺の脚の間に尻をつけて座り込んだ奴に、猫にするやり方を真似て、頬から顎を手のひらで包み、そっとさすってやる。気持ちよさそうに目を閉じるにゃんこは、今にも喉を鳴らしそうだ。
 俺は、そんな奴を目を細めて見つめた。
「上手にできたら、ご褒美やるよ。うんと可愛がってやる」
 俺の言うこと聞けるよな? と囁きながら、促すように頭を引き寄せると、ガキは俺の意図を察したらしく真っ赤になった。ためらって、それでも、おずおずと俺の下肢へと手を伸ばしてくる。
 こうなれば、15だからどうとか、関係ない。仕事柄奉仕するのは慣れているが、奉仕させることなどほとんどないから、ひどく興奮する。
 俺は舌なめずりをしつつ、焦れったいほどもどかしい手つきでボトムのベルトに手をかけるガキのマリモ頭を、優しく撫でてやった。

 

 

 とりあえず初フェラは、歯を立てなかったのと一所懸命さを評価して、65点てとこだな。

 

 

 

 

      ――――END

 



ゾロたんの初フェラの点数でした〜(死)
男娼×高校生、小話その2でした。
『LOVELY〜』の8話と9話の間あたりかな。
小話も、今んとこサンジさん視点ばっかですが、
連載終わったらゾロ視点でも書きたいです。
いや、海賊設定の話も書きたいとは思ってますが…
パラレルなんて、私には書けないと思ってたのになァ。
世の中不思議がいっぱいです(お前が言うな/苦笑)
'09.02.23up


 

 

※ウィンドウを閉じてお戻りください※