いじめたい。



「ねェ、サンジ君。今日、サンジ君の番だったわよねェ?」

 私の言葉に、サンジ君の顔が引き攣った。これだけで、私の言いたいことを理解したらしい。
 にっこりと笑いかけてやれば、反射のようにへらりと笑い返してくる。

「約束。……覚えてるわよね?」
「はい……ナミさん♥」

 口端をひくつかせながらも、語尾にハートを付け忘れない辺り、さすがはサンジ君よね。

 

 

 夜が更けて、皆が寝静まった頃。仕込を終えたサンジ君がキッチンを出て、見張り台のゾロに声をかけた。
 約束は約束で、ゾロは決して忘れたりしないのだけど。やっぱり抵抗があるのか、自分から進んでは来ない。こっちから、呼びかけてやらないと。
 サンジ君の時にもそうであることに、少しホッとする。私との時だけ、積極的ではないわけではないと、知って。ちゃんと、ゾロの態度が平等であることを、確かめられて。
 少しして降りてきたゾロは、サンジ君に招かれるままキッチンに足を踏み入れ。
 そこにいた私に、目を見開いた。
 私は、サンジ君に淹れてもらったアイスティーのグラスを目の高さに持ち上げ、立ち竦んでいるゾロに笑みを向けた。
 戸惑ったゾロが、ぎごちなく首を巡らし、説明を求めるようにサンジ君を睨む。サンジ君は、繕うような曖昧な笑みを、私に向けてきた。

「……コック」
「えーと、あー。……とりあえず飲むか?」

 どういうことだ、と問うゾロに、サンジ君はいそいそと酒瓶を取りに行く。彼からの説明は期待できないようだ。しょうがないわねェ。

「こないだ。私の番の時に、サンジ君が混ざってきたでしょ。だから今日は私が、混ぜてもらうってワケ」
「……な……ッ」

 一瞬ポカンとしたゾロは、私の言葉を理解した途端、真っ赤になった。あら可愛い。あの時のこと、思い出しちゃったのね。
 私とサンジ君、ふたりがかりで可愛がられて、メチャメチャに乱れまくったゾロ。覚えてるわよ、私もしっかり。だって本当に、すっごく可愛かった。
 それに、確かあの時。

「てめェら……ッふざけんじゃねェ! 勝手にふたりでやってろッ」

 顔を真っ赤にして怒鳴ったゾロは、後退り、たった今潜ってきたばかりのドアを出て行こうとする。
 それに気づいたサンジ君が、瓶を手に、慌てて戻ってきてドアを閉めた。
 そうそう。駄目よ、どさくさ紛れに逃げ出そうなんて。
 私は立ち上がり、ゾロの前へと足を進めた。ちょうど、サンジ君と私とに挟み込まれた形になったゾロが、息を呑んで固まる。
 私は、にっこりと微笑んだ。

「あんた、あの時言ったわよね……何してもいいから、って。なのに私たちから逃げるつもりなの?」
「逃がさねェよ、ゾロ。大体、今日は俺の番って決まってんだ。約束を反故にする気かよ」
「……っっ」

 私たちふたりにそう責められて、言い返せないゾロは悔しそうに唇を噛んだ。
 諦めなさい。
 私たちに、あんたが口で勝てるわけなんてないんだから。

 

 サンジ君がゾロを抱えあげて、テーブルクロスを替えたばかりのテーブルの上に腰かけさせる。あの時とは逆に、私がテーブルに乗り上げて、ゾロを背後から抱き締めた。
 往生際悪く、じたばたと暴れるゾロに、私は耳元に唇をつけながら言った。

「大人しくしてないと、あの時みたいに縛っちゃうわよ」

 効果はてきめん。ゾロはびくっと身を竦ませた後、舌打ちとともに強張っていた身体から力を抜いた。
 本気で逃げたいなら、私の腕なんか簡単に振り払えるし、サンジ君をぶっ飛ばすことだってできないことはないはず。
 最初から、そうまでして私たちから逃げようなんて思ってないくせに、ホント往生際が悪いんだから。
 サンジ君が、私に合わせるように、反対側の耳に唇を寄せる。ピアスのあるほうだ。ホールの辺りにくちづけて、ピアスごと耳朶を食む。私も、同じようにしてやった。
 耳は、ゾロの弱点のひとつ。抱きしめている身体が、ピクピクとちいさく跳ねているのが感じられる。私たちに弄られている耳は赤くなっていて、うっとりとしたサンジ君の表情から、ゾロの顔も耳と同じに赤く染まっているだろうと知る。
 私はゾロの耳を舐りながら、シャツを腹巻から引っ張り出した。裾から手を入れ、きれいに割れた腹筋から胸元までを撫で上げる。

「っ……ナ、ミっ……」
「あ。ナミさん、ずりィ」

 息を呑んだゾロが私の名を呼び、サンジ君が私に張り合うように手を割り込ませてきた。耳を解放し、今度は滑らせた唇で首筋へ吸い付く。
 しばらくふたりで、競うように胸を撫でまわし、首の周りに唇を這わせていると、ゾロが震える両手でそれぞれ、私とサンジ君とを掴んだ。まったく力が入っていないそれは、私たちの動きの妨げにはならなかったけど。
 私は肩越しにゾロの顔を覗き込み、サンジ君も顔を上げた。
 頬を上気させ、目を潤ませたゾロの表情は、思わず一瞬呼吸を忘れるくらいに艶っぽかった。
 カァッと、体内の熱が一気に上がった気がする。それは、サンジ君も同じで。

「〜〜〜っっ、この、エロマリモっ」
「あんた、色っぽすぎんのよっ!」

 八つ当たり気味に、そう怒鳴って。
 申し訳程度のゾロの制止を無視して、愛撫を再開する。
「ん」とゾロが上げかけた声を呑むのが判って、何が何でも啼かせてやりたくなる。
 好きな子を苛めたい、なんて。私たちの愛情表現って、小学生レベルなのかしらね?
 ま、やってることはしっかりオトナなわけなんだけど。

 

 

 素直に鳴き声を上げるまで散々に私たちに弄られ、ぐったりとしていたゾロが、もそっと身動ぎした。

「何よ。もう少し寝てたら?」
「……ん。見張り……」

 子供みたいに目を擦りながら掠れた声で言うのに、そうだったと思い出した。今日はサンジ君の番で、ということはゾロが見張り番だったんだわ。
 見るからに辛そうにしているくせに、身体を起こそうとするゾロに、私は慌てた。
 手加減なんか、私もサンジ君もしていない。ふたりがかりでされるゾロの負担なんか、すっかり失念してしまっていた。

「ナミさん。こいつ、寝かしつけといて。今日は俺が見張りすっから」
「なっ、コック!?」
「判ったわ。お願いね、サンジ君」

 タバコをふかしていたサンジ君が、了解、と笑ってキッチンを出て行く。
 ゾロは納得していなかったが、半分腰が抜けたようになっているゾロを押さえるくらい、私にもできる。

「離せ、ナミっ。こんなことで借り作りたくねェ!」

 私の腕から逃げ出せもしないくせにそんなことを言う意地っ張りに、私はにっこりと笑って言った。

「だったら今度は、本気で足腰立たなくなるまで可愛がってあげましょうか」

 ビシ、と音がしそうに固まるゾロ。
 大人しくなったゾロを横たわらせ、毛布をかけてやる。ぽんぽんと軽く叩いてやれば、瞼がとろりとしてきた。やはり眠気には勝てないらしい。
 お前ら、マジで最悪、と今にも寝入りそうにしながら、それでもゾロがぽつりとそう漏らす。
 それは、褒め言葉として受け取っておくわ。

 

 

 

                              ――――END

 



みのり様からリクエストいただきました。
サン+ナミ×ゾロあるいはナミゾロで、攻め攻めなナミさん、というリク。
サン+ナミ×ゾロ、というので『たべちゃいたい。』続編にしちゃいました。
別にそういうリクではなかったんですが、これしか浮かばなかった(死)
いや、楽しかった!
やはりナミ攻、大好きです!!(ていうか、ナミゾロですが)
リクでエロはどうかと思ったので、寸止め(?)です。
みのり様、リクありがとうございました。
どうぞお納めくださいませ〜!m(__)m
'08.06.02up


 

 

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