向き、不向きゾロの上に圧し掛かりながら、不意にサンジが口にした内容に、ゾロは思わずポカンと大口を開けた。 サンジとしかセックスの経験がないゾロとは違い、これまでサンジの相手をしてきたのは、女ばかりだったと聞いた。だから、そちらに考えが及ばないのは無理もないかもしれないと、今までゾロはそう思っていたのだった。 何を思って今更そんなことを言い出したか知らないが、ヤらせる気など欠片もないくせに、よくも言えたものだと呆れる。 もしもここで、ゾロが「じゃあ突っ込ませろ」と言えば、途端に逃げ腰になるだろうことは、容易に想像がつくというのに。そもそも、ゾロにその気があったら、とっくに引っ繰り返している。 ゾロは溜め息をつき、「ねェな」と素っ気なく答えた。 案の定、サンジはホッとしたように強張っていた身体から力を抜いたそのくせ、どこか不満げな目を向けてくる。 どうしてェンだ、てめェは。 「じゃ……女の子としてみてェ、とかは?」 重ねての問いに、あァと納得する。 つまり、突っ込まれるのは勘弁だが、かといって浮気をされるのも嫌だと――どこまで身勝手な男だろうか。 しかし、ゾロは憤りを感じるどころか、込み上げてくる笑いを抑えるのに必死だった。 サンジとは違う。元々ゾロは、性に関してまったく積極的ではなかったのだ。ホイホイと余所に目を向けられる性分でもない。 サンジを受け入れた時点で、ゾロの『相手』は生涯サンジひとりと決まっていたのだ。 あまりにも情けない顔をしているサンジを、少し虐めてやろうかと、珍しくそんなふうに思ったゾロだったが。 「……ソノ気になった」 「ぅえっ!?」 ぽつりと漏らされたゾロの呟きに過剰反応して身を引きかけるサンジの腰を、ゾロは強く掴み寄せた。 あまりにも想像通りのサンジの反応に、ついに抑えきれず、ゾロはクスリと笑った。 「アホが。……俺がそんな気起こせなくなるくれェ、しっかり満足させてみせたらどうだよ。なァ、ラブコック?」 その気もない相手を無理矢理どうこうして、楽しいわけがない。少なくともゾロは、強引に押し切るやり方や、力づくでなんて方法ではしたくない。 サンジだって、基本的にゾロに無理を強いたりしたことはない。少しでも拒む素振りをすれば、すぐに身を引いてしまうのだ。 嫌がる相手との一方的な関係など、ゾロも望んではいないのだと、そんなことが何故サンジには判らないのだろう。 それに、そんなふうにして得るものよりも。 くちづけるときの、愛おしむまなざしだとか。 繊細なくせ、どこか荒々しささえ感じられる余裕のない愛撫だとか。 挿入ってくる瞬間の、うっとりと快さそうな表情だとか。 体内の奥深くに注ぎ込まれる、情欲の証だとか。 ゾロの求めるのは、奪うものではなくて、そうしてサンジから与えられるものなのである。 ゾロの言葉に息を詰めていたサンジが、ちいさく喘ぎ、ゾロの胸に顔を埋める。触れる息遣いは、すでに余裕など感じられず、ひどく忙しない。 サンジもまた、ゾロを求めている。そう感じて、ゾロは口元に妖艶とも言える笑みを浮かべたまま、瞼を伏せた。 「クソ。このエロマリモが……、覚悟しろよ」 欲に塗れ、掠れた声で、サンジが唸る。 笑んだままの唇を吐息ごと奪う勢いで塞がれ、自ら誘い込むように歯列を開く。触れ合った舌の甘さに、ゾロは背を震わせた。 きつく絡めとられ、息さえつかせぬような激しいくちづけには、苦しささえ覚えるけれど。 それでも抗えないのは、この先にある快楽を知っているため、それとも。 「……コック……」 ゾロは腕を伸ばし、サンジの首に巻きつけた。そのまま引き寄せるようにわずかに力を込めれば、サンジは嬉しそうに笑い、今度は柔らかくくちづけてきた。 彼を、自分だけに繋ぎとめておきたい。手放したくないし、余所見をさせたくもない。そのためになら――なんて。 結局思うところは、自分もサンジと同じだ。 俺も大概みっともねェなと、焦ったように性急な愛撫に任せつつ、ゾロはちいさく自嘲した。
求めるにしろ与えるにしろ、人間には向き不向きがあるということだ。
――――END
ロロ子様からリクエストいただきました。 ヘタレサンジ×ヘタレゾロ、ということだったんですが。 …どの辺がヘタレ同士なのでしょうか??(死) いえ、その。アレですよ(どれだ)。 桃木的ヘタレの定義が、 「見っとも無く受に縋りつき情けを求める攻と、そんな攻を許し受け入れてしまう受」 これつまり、割れ鍋に綴じ蓋式バカップル、と(謎)。 途中で、外したかなと別のお話を考えかけたのですが、長くなったので止めました。 そっちは別で完成させて、本にするかもです(THE★卑怯技)。 ロロ子様、リクありがとうございました。 意味の判らないものになってしまってスミマセンでした!!(短いし…/汗) こんなものではありますが、どうぞお納めくださいませm(__)m '08.05.19up
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