やっぱりキミが好きなんです。
もうね、もうね! 人目なんかカンケーなく、いつだってどこでだってぎゅーってしたい!!ってくらい。ついでに人目がなかったら、ちゅーとか(以下自粛)しちゃったりしたいくらい、とにかくすっげ可愛いんだって! いやマジで。うん。 何しろ二年も片想いしてて、キセキ的に手に入ったよーなヒト。大事で大事で、大事なヒトだ。 ケド、あんまり可愛すぎるから。 あーもうっ! にゃんでそんな可愛いのっっ!? ――――――って思って、ついついイジワルしちゃったり。しちゃうんだよね。 だってね、ほんとーっに可愛いんだよ。困ったカオとか、泣き顔とかまで。 残念ながら、笑顔はまだあんまし見せてもらってナイ、んだケド。 特に、えっちの時の表情とか――――――っとイケナイ! この先は、ヒミツね。だってモッタイナイもーん★ あっ、そのコイビトが呼んでるや。 じゃっ、そゆことで★ ――――――邪魔、しないでよネ!
突然だが、俺の恋人は実はかなりの策略家ではないかと、思う。 何というか、その………よく、甘えついてくる。いや、それはいい。可愛いし…………が。が、なのだ。 最近になって、ふとおかしいと思ったのだが。どういう訳か、自分は常にそいつに振り回されるがままになっているのである。 例えば、そいつは人前でも構わずに抱きついてきたり、俺がベンチに座っていれば当然のように隣に――――しかもぴったりとくっついて――――座るし、挙句の果てにはそのまま横になって、膝の上に頭を乗せてきたりする。所謂、膝枕という状態だ。 当然、俺は慌てて退かせようとする。そこは部室だったり、コート脇だったり――――とにかく、二人きりの時と場所を選んではくれないからだ。 しかし何度言っても聞いてはくれず、終いには強引に立ち上がろうと脇に突いた手を包み込むようにきゅっと握ってきて。 「もうちょっとだけ………ダメ?」 上目遣いに見上げて、甘えた口調でそう強請ってくるのだ。 結局跳ね除けることも出来ず、俺は様子に気付いた大石が助けに入ってくれるまでそいつの枕になっていた。 そう言えば、こんなこともあった。 アイツの方から告白をしてきて、何だかんだで気付けば流されるがまま付き合うことになって。 そもそも最初は、学校内での接触は一切禁じていたのだ。公私は分ける主義だ。プライベートでも躊躇うのに、それ以外でベタベタする気もさせる気もなかった。 ところが、それを言い渡すとアイツは不満気な表情をして。 「ヤダよっ。にゃんで触っちゃダメなの。俺たち恋人同士じゃん!」 それとこれとは話が別だ、と言ってやれば頬を膨らませて上目遣いに睨みつけてきた。――――――と。 「……だって、やっとコイビトになれたんだもん……。学校でだっていっぱい触りたいし、えっちなコトもしたいよ」 次には哀しげに目を伏せて可愛らしく拗ねた声音で、さり気なくとんでもないことを言う。 俺は思わず真っ赤になり、ふざけるなッ、と声を荒げた。付き合ってられん、と背を向けかけた途端、待ってよ!としがみつかれた。 「誰もいないとこで! なら、いいでしょ?」 「…………ダメだ」 ここで甘やかしてはならない、そう思ってキッパリと断る。 何しろ先日、部室でキスをしていたところを危うく大石と乾に見付かりそうになったばかりなのだ。 すると、腰の辺りに回されていた腕の力がふと緩んで。 諦めてくれたのかと思ってホッと気を抜いた途端に、気付けば床の上に転がされていた。 あまりに一瞬のこと過ぎて、一体何をどうやってこの体勢に持ち込まれてしまったのか判らなかった。呆然と、圧し掛かってくるアイツを見上げていると、今までの子供じみた表情が嘘のように消えて、意地悪そうに細められた目が見下ろしていた。 「手塚がそのつもりなら、俺にも考えがある」 「な……に、」 何言ってるんだ? と、最後までは言わせてもらえず。 楽しげに笑ったアイツが、シャツの上から俺の胸を撫でた。不覚にも、思い切り反応してしまった俺に、クスクスと笑いながら。 「手塚の言うことなんか、聞いてやんない。ココで、スル」 ギョッとして身を起こそうと肘を突いたが、逆にそれによって押し退けるための手が塞がってしまった。 アイツの手が、シャツの釦を一つ、二つと外していって……。 「や、やめろっ! やだ……!」 半恐慌状態に陥ってしまった俺は、まともな文を組み立てることもできなくなり、単語のみで拒絶した。それも、イヤダとヤメロの二つしか浮かばない辺り、俺は実は頭が悪かったのかもしれない。 「何がイヤ? 俺がイヤなの?」 すっかり前を肌蹴させてしまったアイツが、素肌に直接触れてくる。 初めてではないが慣れるほどまだ回数を重ねていない――――いくら回数を重ねても慣れることなど出来ないと思うけれど――――俺は、触れられるたびに過剰な反応を返してしまう。それがアイツを喜ばせてしまうと判っても、自分の意思ではどうにもならない。 このままこんな、部室の床なんかで最後までされてしまうのは絶対に嫌だ。 冷たいし汚れるし、何よりコイツとはこんなふうに触れ合いたくはない。 「っ……わかった、手っ、手を繋ぐくらいならっ」 「手だけ? キスは?」 「だ、ダメだっ……お前この間のこと反省…――――あ!」 折角の譲歩を一蹴されてムッとした俺は、だが言い終える前に自ら言葉を途切れさせてしまった。 胸の先端に指を掛けて執拗に嬲るアイツに、とうとう根を上げる。 「――――っキスまで! キスまでだからなっ!」 途端、満足そうな笑みを浮かべたアイツは俺の乱れたシャツを元通りに直し、釦まできっちり留めると、睨みつけてやろうとした俺にすかさず抱きついてきて、 「嬉しい。アリガト……」 これ以上ないというほど幸せそうな声音で、耳元にそう囁いてきたのだ。 結局はそれに絆されて、まぁいいか…などと許してしまったのだが。 考えてみればかなりヒドイコトをされたことに違いはなく、何度もそれについて抗議しようとしたのだけれど、そのたびに哀しそうな瞳で上目遣いに見つめられてしまってそれ以上は言えなくなり現在に至る。 アイツはちゃんと判っているのだ。どんなふうにすれば俺が拒めなくなるかということを。 甘えてダメなら身体に訴えるなんて、卑怯にも程がある。哀しそうな潤んだ瞳も、十中八九演技に違いないのだ。 なのに、いざあの大きな瞳に見つめられてしまうと、つい言うことを聞いてしまう。やはり俺は大バカ者なのか、それとも。 ……………こういうのを惚れた弱み、とか言うのだろうか? アイツから言い出したのに俺のほうが弱いなんて間違ってる。理不尽だ。 そう思うのに、やはりアイツのことが可愛くて仕方ないなんて。でも。
「てっづかー♥♥」 甘えた声で名を呼んで。 甘えた声に名を呼ばれて。 抱きつきながら、スキダヨと繰り返す。 抱きつかれて、吐息混じりの言葉を耳元に感じる。 そうすると、強張ってたカラダから力を抜いて俺に任せてくれる。 それだけで力が抜けてしまう俺を、嬉しそうに受け止めてくれる。 そんなキミが、大スキなんです。
桜吹雪様から、メールでリク頂きました。 |